声の「呪術性」と「機能性」について

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昨日は、渋谷西武8階のオルタナティブスペースで、公開で明和電機ボイス計画の公開設計を行いました。ふだん僕はスケッチをカフェで行います。スケッチはすべての創作の出発点ですが、なかなか普段、みなさまにお見せできる作業ではない。いわば、女性でいう化粧みたいなもので、ものすごいプライベートなわけです。それを公開で行うというのは、

「電車の中で化粧するOL」

みたいなもので、あんた、その行為を、「見せたいの?」それとも「まったく気にしてないの?」
のどちらか。当然僕は、見せたいからやってるのですが、はたして、うまくいくのかな?緊張して描けないのではないか・・・・と思ってましたが、なーんも問題ありませんでした。集中すると、まわりは気にならないものですね。

さて、僕が今、なにを公開でスケッチ・設計をしているかというと、「歌うロボット」です。メカニックなしくみで声を出す機械です。なぜ僕がその機械に惹かれてるか、ということを、「呪術性と機能性」というキーワードでご説明します。

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むかしの楽器をよくみると、「機能性」の部分と「呪術性」の部分があります。たとえば木魚には、音とはまったく関係ない、魚の図を彫刻した部分=呪術性と、いい音を出すために共鳴を考えて作られた部分=機能性があります。

ここでいう呪術性とは、「土俗性」「アニミズム」「原始性」などをひっくるめたキーワードと思ってください。(西洋における呪術性と、東洋のそれとは、ニュアンスがことなりますが、その議論は今回はすっとばします)。

楽器とは、それこそ獣を皮をはぎ、樹木を削って作ったものなので、もともと呪術性の高いものでした。

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明和電機の初期製品である「魚器(NAKI)シリーズ」に登場する「音が出る製品」は、呪術性が魚のイメージとして登場します。その形状は、音の質とはまったく関係ありません。

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つまり魚器(NAKI)シリーズでは、木魚と同じく、「呪術性」と「機能性」は分離していました。

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ところが、2003年、人工声帯ロボット「SEAMOONS」を開発したとき、大きな変化がありました。このロボットが放つ歌声そのものが「呪術性」を含んでいたのです。おそらくそれは、「声」という音質に対する、人間の原始的な(生物的な)反応が、得体のしれないものとし感情にうったえたからだと思います。

Seamoons

これまで分離していた「機能性」と「呪術性」が、人工声帯というバイオメカニックなしくみによって、統合された。これは僕にとって、とても興味深い現象でした。

現在、初音ミクのような「電子的な肉声の再現」や、ヒューマンビートボックスのような「肉声による電子音の再現」といった、声をとりまく楽器の世界が面白くなってきています。この背景には、

①電子技術、コンピュータの処理能力の向上、チープ化
②これまでの電子楽器を超えた、アナログな発音法のスタイル化
③YOUTUBEなどの映像コミュニケーションツールに映える楽器

などの理由があります。そしてそれにもうひとつ重要な点を加えるならば、「楽器における呪術性の復活」というのがあると思います。

そういうものが作りたい、と強く思い「明和電機ボイス宣言」を発表しました。手前味噌ですが、そうした楽器を作るには、エンジニア的な技術のほかに、イメージ力や造形力やスピリチュアル(うわ、こええ)な感覚が必要で、これは実は芸術家という職人に、向いているのではないか?と思っています。

とはいえ、歌うロボットを作るための問題は山積み。スケッチやドローイングを通して、まずはその問題をさらいつつ、全体のイメージを作り上げていこうと思います。

公開スケッチは夕方6時より、ほぼ毎日行っております。社長が会場にいるかどうかの情報は、ツイッターにてご確認ください。

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