プラモほしさに親の財布から100円盗む <社長と模型 その1>

2月19日、明和電機がワンダーフェスティバルに出展します。

これを記念しまして、社長の”模型への思い”を、つづっていこうと思います。今回はその第一弾、幼少のときのプラモデルの思い出をご紹介します。

僕は小学校の6年生まで、兵庫県の赤穂市に住んでいました。城下町の小さな街でしたが、一軒、プラモデル屋さんがありました。名前が「あけずみ」。店の正面にはショーケースがあり、店長のおじさんが作ったと思われるプラモがならぶという、典型的な海洋堂インスパイヤ系の模型ショップでした。

幼稚園のときから、おこずかいをもらうと、そのプラモ屋に行き、当時は50円の小さなプラモデルをわくわくしながら買っていました。

お店には気難しい店長のおじさんの他にネコがいて、プラモの匂いと、ネコの匂いがまじった、独特の魅力的な香りが漂っていました。

おじさんはとにかく気難しい人で、長居している客がいると「買わないなら帰れ」と平気でいう人でした。しかし、プラモにかける情熱は熱く、あるとき兄ちゃんとタミヤのジオラマ談義になったときなど、小学生の僕らにタミヤの分厚いカタログをタダでくれることもありました。

さて。

小学校3年生のときのこと。一週間のおこずかいが210円と決まっていた当時、駄菓子屋でおかし屋を買って残った100円硬貨をにぎって「あけずみ」にいきました。店内を物色していると、何やらいままで見慣れないサイズのプラモの箱がありました。「なんだこりゃああ!すげえええ!」と、一発で心をわしずかみにされました。

それがこれです。

 

 

吉野正裕さんのページから引用

 

 

・・・ダサい!今見ると悶絶ダサい!

しかし、当時の僕にはこれがイカすロボットに見えたのでした。まず、プラモメーカー「青島」がオリジナルで生み出した、TVでは放映されていないキャラクターという珍しさ、かつ、合体ロボットなのに、一体が100円、つまり「頭」「胴体」「手」「足」の、4体の完全合体を全部そろえても、400円という安さに、衝撃を受けたのでした。

当時、コンバトラーVの超合金の合体ロボが、全部そろえると7000円以上していたので、これはもう、「値段のケタが、ひとつ少ないやんけ!」というほどの激安感だったのです。

100円しかもっていなかったので、おもわず、「頭のパーツ」を買って帰りました。そして、兄ちゃんに「すごかろう!これすごかろう!」と見せると、兄ちゃんも「すごい!すごい!」と興奮したのでした。

しかし。

頭のパーツだけあっても、やはり物足りません。ディアゴスティーニ・システムと同じく、どうしても全体をそろえたい欲望がガキの胸中にうずまきます。まんまと青島の商売にハマったわけですが、残念ながら、お小遣いは0円。

「・・・・・・これは・・もう・・・親の財布から100円しっけいするしかない。」

ここで小学3年生の僕は、生まれてはじめて「ねこばば」という悪の道に手を染めることを決意しました。でも、親の財布からそのまま盗んだら、すぐにバレてしまう。何かいい方法はないか・・と、小学3年生のしみったれた脳で考え出したのが、

「偶然100円を見つけた作戦」

でした。その手法は以下になります。

・・・・・

①台所の引き出しにある、親のがま口の財布から、100円をこっそり抜き出す。

②100円を本棚と床のすきまに隠す。

③兄ちゃんを呼ぶ。

④なんか自分でギャグを言って、笑い転げるて床に倒れる

⑤「あああ!床のすきまに100円があるよ!兄ちゃん!」と発見する。

⑥100円にぎって「あけずみ」へゴー

・・・・・

兄ちゃんを発見時の目撃者として巻き込むという、かなり呼息な作戦でしたが、見つけたときは兄ちゃんも「ほんまやああ!」とまじで驚いていたのでした。

さっそく「あけずみ」に走り、「胴体のパーツ」を買ってきて組み立てる。このキット、接着剤を使わない、現在のガンプラみたいなシステムだったので、組立もあっという間にできる。すると、今度は「手のパーツ」が欲しくなる。

そこで上記の①から⑥を、次は「テレビの下に100円を隠す」ことで行いました。2回だから兄ちゃんも「・・お、おお、また見つかったんか。」と首をかしげてました。

最終的には「足のパーツ」も欲しくなり、次は「机の下に100円を隠す」ことを行いました。つまり「偶然100円を見つけた作戦」を、3回繰り返しました。「あけずみ」のおじさんも、一日になんども買いにくる僕に「またきたんか」という顔をしていました。兄ちゃんも最後は「・・おまえ、ネコババしたやろう」という細い目で、僕をプラモ屋へと送り出したのでした。

親の財布から300円を盗んだことは、まず、おばあちゃんにバレました。夕飯の買い物をしにでかけたとき、財布のお金が減ってることに気がついたのです。そして家にもどると、部屋の中では、合体ロボットで楽しそうに遊ぶ僕。

「おまえか」

とおばあちゃんのまなざしがロックオンしました。すぐさま「のんちゅん(ぼくの幼少の呼び名)、ちょっとおいで」と、家の奥の、裏庭の入り口に呼び出されました。「おまはん、財布からお金とったやろ」と言われ、全身がピキーーン!と硬直しました。「偶然100円」が「必然100円」に変わった瞬間です。

「なんで盗ったんなら。ゆうてみ」

と言われ、

「・・・ほしかったんやもん」

とアホな回答しかできませんでした。結局そこから母親にも伝わり、あとでこっぴどく怒られました。

とにかく今見れば、ダサいとしか言いようがないプラモデルですが、オモチャには魔法があるようで、本当にそのときは欲しくて欲しくてしかたがなったのです。不思議ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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