言語化できないような濃い匂いを作り出せてるもの
 
中村氏(以下、敬称略:中)
:これ、一昨日刷って、昨日折ったらしいですよ。乾いてないから、指で引っ掛けるとインク伸びちゃいますよ…
(会場から笑いが…)
土佐社長(以下、敬称略:社):インクの臭いプンプンしますもんね。気をつけてください。
:糊もまだ乾きがあまいと思います。すごい、半生状態。
:ハハハ!ま、ある意味、明和電機っぽいですね。ギリギリはね。
今日は対談ということでですね、どういう形式で行うかと言いますと、お互いに質問を5つ考えてきたんですね。それを、ガチンコで質問する。相手の人生をズタズタにするような質問をですね、お互いに(笑)。ウソです。
:僕、まじめに書いちゃいましたけど。
:僕もそうなりました。ということで、ソレを見せ合いっこしながら進めていきたいと思います。まずは、この辺から…
「企業 C I とは何ですか?」
中村さんが考える企業のCIとは何か?ということをお聞きしたいと思いまして…というのは、『明和電機の広告デザイン』と、ほぼ同時で“佐藤雅彦さん”と『勝手に広告』という広告の本を出しましたよね?どちらも企業の広告(CI)の本なんですが、どちらも本当の企業CIじゃないですよね?
:えっと、そうですね。ホント言うと、本物の企業のCIじゃなくて…
:やりたいからやった!?
:そういうことですね。
:そういう中村さんにとって、会社がCIをやることをどう考えているのかな?
:僕は、グラフィックデザイナーといっても最初はレコード会社に勤めていて、その後、独立したわけですけど、代理店やプロダクションにいたわけではないので、本当の企業CIってやったことがないんですね。
:一切やったことがない?
:えーっと、ないですね。
:広告はありますね?
:あります。CIは他の人がやってるのを本で見たりしてすごいなぁって感じでずーっと見てたんですけど、10数年前くらいかCIを変えるブームがあって、結構昔からあるいいロゴとかが全部めちゃめちゃになって変な丸いものになったりとか、そういう時代が…
:例えば!!??
:あ、いやー、それだけは…。
(会場から笑い)
:僕が昔好きだったロゴとかがなくなったりしたのは寂しいですね。TBSのロゴとかすごく良かったんですけどね。みんな頭でロゴを考えたりするんですけど、ここにきてやっとポール・ランドが作ったIBMのロゴとか何十年も長持ちしてて、あのロゴを見るだけで理屈じゃなくてある特別な気持ちになる「あぁ、IBMだなぁ」っていう、そういう言語化できないところも含めたものが、会社の匂いとかそういうものが出せるものなら、自分もやってみたいなぁとは思います。だけど、マーケティングとか分かり易さとかそういう面だけで作ったものは長持ちしないかもな〜とは思いますね。なので、門外から見た企業CIに対しては、すごい濃い独自の匂いを作り出せてるものが好きですね。

予測不能な男
 
:では、中村さん次の質問をどうぞ。
:えーっとですねー、……。
(パネルを用意する様や、その文字面を見た客席から笑いの渦が…)
「土佐正道」
:ぉおっと!これはねー、朝までかかりますけど(笑)。今朝もねー、母親から電話がかかってきて「正道引越ししたんじゃろ〜?どこにおるん?」て。
(会場爆笑)
:ホントに引越したかどうかがわからんから教えてくれってね。フフっ!
:で、教えたんですか?
:はい、「生きてますよ」ってね。中村さんにとって“正道”ってどんなイメージですか?
:僕にも2コ上のお兄ちゃんが居るんですけど、2コ上というのがすごく苦手でして…。苦手でもあり切っても切れないという繋がりが…。中1で入学すると中3に兄が居て、頼りにもするんですが、いつも従うというか、なんか特別な気持ちの問題で、正道さんにも同じものを感じるんです。これだけ付き合いも長いのにすっごい緊張するんですよねー。
:え!?正道に会うと??緊張するの??!
:この間、電話で話しただけで汗びっしょびしょでしたからね。
(会場爆笑)
:「サッカーのワールドカップ観たいんだけど、どこで観たらええんかのぉ」って聞かれて「丸ビルに宮本のカフェがありますよ」って、それだけ答えただけですけど緊張しましたよ、、。2コ上は特別の存在で壁がありますね。
:ギリギリ、フォーク世代ですからね。
:背伸びして覗いてみても、そこにどっぷり入れない。下を受け入れない感じがあったりとか、向こうも降りてきてくれない。
:昭和40年会って兄が入ってるのか入ってたのか、今はよくわからない状態ですが…まあ、やってるんですが、ああいうのを見てもあの世代は "つるむ"んだなぁって思いますね。
:一緒にひとつの部屋で酒を飲みながら語れちゃう、アレがすごい。自分には出来ないなぁって思いますね。僕ら一晩飲んだなんてことないですもんね。
:「キャ、キャ、キャバクラ行きますか…」みたいな感じですもんね。行ったことないですけどね。
:無理です!
:アハハ!
(会場爆笑)
:中村さんと僕の間にケバいお姉ちゃんが座るわけですからね!ピキーっ!ですね。
:なんかアレですかね?面白いこと言ったりして、サービスしたりしなくちゃいけないんですかね?
:こういう本(「明和電機の広告デザイン」)とか持ってたほうがいいんですよ、多分。
:あぁ……、武器を…。そうでもしないと、話が出来ない世代なんですよね。とにかく僕にとっては変わった人(土佐正道)で予測不能なんですよね。
:僕も不能ですね。確実に明和電機は兄アリキで最初はやってましたからね。
:お兄さんの役割って現場でアイデアを出したり、すごいくだらないダジャレで救われたりとか、本当にあの有り難みはね、、身に沁みてるんです。
:数打ちますからねー、兄は。なんでしょうねアレは。(笑)
:社長はどう思ってるんですか?
:お兄ちゃんですか?お兄ちゃんは、なんでしょう……。うちは4人兄弟で姉が上に2人居て、兄なんですね。男兄弟ってよくケンカしますけど、兄とはそういうケンカはしませんでしたね。僕にとってはいつも“流行を持ってくる人”でしたね。音楽とか、楽器とか、漫画とか…。週間プレイボーイとか(笑)。あと兄は、物語を作るのがうまいんです。明和電機もそうですが「こんなんどう?お兄ちゃん」って出した種をお兄ちゃんが膨らましたんですよ。そういう才能がありますね。妄想といえば、妄想なんですが(笑)。

:特に文章は独特の正道節があって、前半の読み物等はかなり正道さんによるところが大きいですよね。
:かなりドメスティックですけどね。海外で通用しにくい面白さがあるんですよ。
:海外じゃ、ぜったい通用しない(笑)。
:“みうらじゅん”とかに共通するものがあるんですが、説明できないんですねーこれが。
:惜しいですねー。
:ハハ!でも最近また兄を微妙に使いはじめているんです、いろんなところで。徐々に小出しにしていこうかなと(笑)。
:どこかで復活とかそういう噂もありますが…
:あのぉー、難しい手綱の引き方があるんですね。
:読めない人です。

すごくリンクする部分がある
 
:前々から聞きたかったことがあるんですが、聞いてもいいですかね?コレッ!!
「佐藤雅彦さんとのお仕事について」
中村さんという人となりを深く知りたいということで、お聞きしたいのですが。もう、佐藤さんとお仕事されてどれくらいになるんですか?
:えっと、9年くらいですね。
:最近、本屋に行ってパッと「あ、これ中村さんの仕事かな?」って思って佐藤さんの本を手に取って見たら、中村さんの名前がなかったりしたので…。中村さんと佐藤さんのお仕事ですごく似てる部分があって、多分お互いが影響しあってそうなっていったとは思うんですが、中村さんの中で線引きはどうなっているんだろうと思いまして。
:線引き…。
:感覚が似てる。整理の仕方とか、因数分解でいうχの求め方がすごく似ていて、それをすごくシンプルなグラフィックにしていくところがすごく共通する部分があると思うんですけど、外から見ていて、それがどういうふうに絡んでるんだろう?っていうのがすごく不思議だったんです。
:共同の仕事ではすみ分けはなくて、アイデア至上主義というか、一緒に打ち合わせをしてとにかく、少しでもいいものを出すということでお互い頑張って出し合ってます。どんどん出して、企画を決めていくんですね。僕はソニー時代も人と仕事が出来ない(共同作業が出来ない)で有名で、いっつも一人だったんですけど(笑)。なんでしょうかね、仕事の使い分けというよりかは、例えばひとつのいい世界観を2人で見付けてしまった時は、もうどっちが良い悪いを判断するんじゃなくて、そこに理想があるっというか、2人ともその理想に向かってひたすら進むという。だから、どこかにイデアが必ずあって、そこに向かうのですごくわかり易い仕事の進め方ですね。
:それを見つけて、グラフィックにしていく作業は中村さんにお任せなんですか?
:まあ定着は僕が落としこんでますけど、それはそもそもデザインが出来るからやってるっていう。
:佐藤さんの研究室が作られているものってすごく中村さんぽいですよ。
:あ、そう思いますか?僕も、授業とか受けに行ったんですけど、みんなものすごく優秀ですよ。すごくリンクする部分があるから一緒に仕事をしてるんだなぁと思います。
:一昨日でしたっけ? ggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)で開催されている「勝手に広告」の展覧会のオープニングパーティーに行った時お会いしましたが、僕は佐藤雅彦さんがめちゃくちゃ怖いんですよ、実は…。
:それは13年前からそうなんですか?
:明和のデビューきかっけのソニーのオーディションで明和電機を“絶対にコレはいい!”と推してくれたのは佐藤さんだったんです。
:そうですよね! すごく絶賛していましたね。
:その時に、はじめてお会いしたのですが、なんでしょうね?この怖さは…。子供の見透かされてる感じ?に似てます。子供ってずけずけと本質をズバーンッ!って言うじゃないですか、あの感じ。
:ハハハハ、大谷くんみたいだね。
:そうですね、明和電機専属歌手大谷健太郎と近いものがありますね(笑)。で、9年ぶりくらいに佐藤さんにお会いしたので挨拶をしたら「お兄ちゃんどうしてるの?」みたいな話になって…
(会場爆笑)
:やっぱりそこから(笑)。
:そしたら突然、僕の喉をジーッと見るんですよ。会話がピタッと止まって…。え?!なんだろう?と思ったら「信道さん、声帯変わりました?声が前よりちょっと…」って言われて(笑)。前、佐藤さんに「いい声ですね」って褒められたことがあったので、何か気になったんですかねー?
:“ちょっと”でとめられてもねー…
:緊張しました。
:へぇーーー。確かに、あの後「喉が…」って言ってました。
(会場から笑い)

明和電機における“必要悪”だった
 
(次の話題へ…)
:あら〜…コレですかぁ。ものすごいマニアックな話になりますよ(笑)。
:すいません、でもちょっと触れておきたかったので(笑)。
「大谷健太郎」
:「大谷健太郎」というのはですね、かつて明和電機専属歌手、現在行方不明という方なんですね。『地球のプレゼント』という曲を1曲歌い…何者だったんでしょうね、あの人は?
:先日ソニーミュージックに勤めてたときの音楽関係の人からすごい久しぶりに電話がかかってきたんですが「明和電機のあの歌のあの声の人は誰だっけ?」って言われたんです。曲を作ってる時にイメージでそういう声のトーンをサンプリングしてずーっと残ってたらしいんです。それで、「大谷くんっていうんですけど、連絡が取れなくて。でもCDはまだ売ってるので」っと『GOLDEN☆BEST』を買ってくれて聴いたみたいなんですけど、その人の耳にずーっと残るくらいすごい声なんですよね。
:子供のような声ですからねー。見た目は全然違いますけどねー。
:本の中では、このイノシシの絵のくだりや後のコンピューターのジオラマあたりで大谷くんの話は出てきます。
:もともとは多摩美の学生ですね。
:年は僕らよりは1コ上。丙午(ひのえうま)。
:明和電機がデビューした「AAA(アート・アーティスト・オーディション)」に応募していて、そこで知合った方なんですが、仲良くなってカラオケ行ったらやたら声が良かったんで兄ちゃんが歌うたわない?ってことで『地球のプレゼント』を歌うことになったんですね。あのー、当時は明和電機における“必要悪”と言われてたんですね(笑)。
:確かに、お兄ちゃんみたいに読めないよねー。
:あと、工員さんとすごくよくケンカをしていたんですよねー。ハハハ!何故ケンカをするかというと、“本人のいちばん嫌がること”を言うんです。子供なんですねコレも。
:ズバリ言いますよね。
:イノシシの話ですけど、絵がうまい…というか出してくるツボがものすごく面白いんです。
:2人で京都に行ったことがあるんですが、東京駅から京都までの3時間程の間ずっと声出さずに筆談してたんです(笑)。そうすると筆談でアイデア出しが始まって、映画の企画が1本出来上がってしまったくらい、京都に着くまでにヘトヘトになりました。
:僕、オーディション当時は筑波に住んでたんですが、突然原付でやってきて家に泊まっていったことありますよ。多分、さぐりを入れに来たんだと思います。敵を知るために…
:そう、原付バイクでどこまでも現れるんですね。郵便物に切手が貼ってないんです!ああ、来たんだなぁと思う、、。(笑)
(会場爆笑)
:読めなかったですね、あの人は!
:未だに読めなくて、こうしている今もどこかでこうしていることを見ている気がするんですねー。
:そもそも“大谷健太郎”って名前がウソですからねー。
:そうですねー。
:同級生の映画監督ですよね。映画「NANA」を撮った人ですね。
:あの人から取ったの?
:としか思えないですね。
:はぁー、そうですか(失笑)。でも、本人も映画とか映像撮ったりしてますよね。
:初期明和電機には得体の知れない人がよくいましたね。
:ライブにしても何にしても不確定要素が多すぎて、物は壊れるか壊れないか?、お兄ちゃんは来るか来ないか?、大谷くんは無事にみんなとうまくやってくれるのか?それが全てうまくいった時にすごいミラクルがおきる!!(笑)もう、スタッフはたまったもんじゃないですけどね。
:工員さんに"大塚寧々"大好きな人が居たんですよ。その"大塚寧々"を大谷くんがけなしたことで本番前のリハで大喧嘩してましたからね。
(会場爆笑)
:あの温厚な工員Yくんが!
:うぉー!って叫んで掴み掛かってるんですよ。あと、研究員のクワクボくんも大喧嘩ですよ。
:えー、クワクボくんが!
:「ふざけんな、オマエ!」って。ライブ終わった後に。男気なライブでしたね。
:僕は逆に大谷くんを怒らせたことがあるんです。あの人、人と一緒にお風呂に入るのが嫌いらしかったんですけど、京都に行った時、僕が「サウナに行こう」って何十回も誘い続けてたら「ぶん殴るぞ」って言われて、おぉ怖っ〜って思いました。誘い続けましたけど(笑)。
:僕は大谷くんに「副社長は小室哲哉に似てますねー」って言われたことがあります(笑)。色々名言ありますね。「明和電機はYMOだけど、最初に“君に胸キュン”やっちゃいましたねー」とか。
:なんで、ここで大谷くんの名前を出したかというと、僕らも知りたいんですよね、大谷くんのことを。何か情報がありましたらください。是非是非、もう一回会いたいです!

“ボーン!”ときて“ドーン!”
 
:じゃ、次。そーですねー…
「グラフィックデザイナーとは何ですか?」
グラフィックデザイナーが最近、携帯電話のデザインをするじゃないですか。すごく疑問に思うことは、企業がモノを作るにはすごく時間がかかって、開発があって何千人という人が関わっていて、その最後の末端にグラフィックデザイナーという人が登場して、売れるための工夫をしますよね?ところがグラフィックデザイナーが売ってやってんだぞ!みたいな空気を最近すごく感じるんですよ。世の中から。
:なるほど。
:それが、うーーーん???みたいな。なんでしょう???
:えーっと、、、それはちょっと、、。…
:ハハハ!某有名な〇〇〇〇とか〇〇〇〇とか…。
:僕は、わかんないですね、ここに関しては。
:所謂、グラフィクデザイナーって会社と仕事しますよね?一人でグラフィックデザインやってたらそれはアーティストですもんね。クライアントが絶対いて、広告とは何かを売るために必ずするもので、そこは明確ですけど、ここ最近そう言う仕事においてのグラフィックデザイナーもわからないってことですか?
:そういうことですね、なんというか30代じゃまだダメですね。これホントに謙虚に言ってるわけじゃなくて、毎回全然うまくいかなくて、くよくよくよくよするんですよ。今日も本のページ、最初めくれなかったですよ。僕、個人でいうと世の中でグラフィックデザイナーという人のことは、人のことなんでよくわかりませんってことにしてもらってですね…。前はコンセプチュアルなアイデアを具現化して印刷する作業が僕はすごく好きで、そこに真髄を求めてたんですけど、最近どうやら不確定なものとか言葉では表せない“IBM”ロゴの周りに付随している匂いとか、コンビニで思わず買っちゃうものとか、そういうちょっと説明できないものこそデザインの本質があるんじゃないかな?っていうのがうっすら見え初めて、そこはコンセプトとか関係なく「ドーン!」と出たら、みんなが「ドーン!」という気持ちになるっていう(笑)。
:岡本太郎みたいな感じですか?
:そうですかねーー、、。(笑)。
:広告って心理学に結びついてたりとか、マーケティングとか、なんか計算をある程度しているんじゃないか?っていうことですが、中村さんが今言った「ドーン!」で「ドーン!」という発言は宗教っぽいというか?
:そういうことではなくて、例えばサッカーの釜本監督がガンバ大阪の監督の時にフォワードの選手にシュートの仕方を教えた時に「いいか、シュートっていうのは、“ボーン!”とボールが来るだろ、そしたら“ドーン!”と打ちゃあいいんだ」って、ホラ入った。といった(笑)。あの人にとってシュートってそういうことらしいんです。説明出来ないんです。ポール・ランドなんかはコンセプト以上に手から出る間合いとか空気とか、目に見えないところもすごく大きいと僕は思うんです。見た時に人の気持ちをある独特な気持ちにさせるスイッチを押すようなもの。それとは別に商業デザインを考えると、コマーシャルだとどうしても、売るということをしっかりやっている広告の方が好きで、例えば“繊維の間に入った油汚れがヒュ〜っと取れる”みたいな映像とか。やっぱり、アレで買いますよ。
:そうですねー、高田純次が言うよりはいいですねー。
:面白いコントとか、気の効いた冗談をやるよりは、欲している部分を強くついた広告、アートとかデザインじゃなくて広告って特別な物かなと思います。
:そこですごく思うのは、明和電機っていうものは、“明和電機”という知名度を上げるという広告はあるんですけど、“明和電機”という商品そのものは、得体の知れないものですよね。今まであったものではないし。その時に中村さんがCIする時の気持ちのスタンスは何だったんですか?
明和電機を“ボーン!”で“ドーン!”みたいな…
:いやいや、えーっと、“ボーン!”“ドーン!”は僕はまだ出来てないものなんです。やりたいんです!わかんないけど、すごいぞ!っていう、何か幼稚な表現になっちゃうんですけど。例えば、“この人が好き”っていう気持ちとかは説明しにくいですよね?そういうようなものと同じで、生理的にくるものっていうのは、ひとつの目標なんだなと思いますね。明和電機の場合は、当時ソニーで同じ場所に居たので、どっちかというと自分が明和の中に居るような感じで、この流れで、今こうなっていて、このモードの次くるのは何か?というのが中からわかっていたので、よりよく見せるっていうか…。結構まじめに、次はライブだからきっちりライブのチラシだとか、ホントに普通のクライアントとデザイナーの関係に近いものがあって、やってる商品はサバオとか魚コードとかになっちゃうんですけど(笑)。表現を落とし込むときにも、明和の為にならないことはもちろんやらないし、すごく真っ当なスタンスでやってきたなぁと思いますね。

:13年間やってきた蓄積って結構すごいと思ってます。最近、海外の人が勝手に作った明和電機の広告物があるんですけど、すごくないですか?(左写真参照)
:コレ、やりたかったですねー。
:コレ、ひらめいてたら絶対やってましたよ!
(会場は笑いでどよめき)
:コレは裏もすごいんです。「アートとナンセンスの間を暴走する、怪誕爆笑ライブ」になってますからね(笑)。これは中村さんからは出てこないですよね。
:そうですね(笑)。本の中にも偽物魚コードの写真があるんですけど、やっぱりアジアの野太さって、ある意味そこだけは見習いたいですね。どーしても、格好つけちゃったり、上品にまとめ上げちゃう自分が居て、なんかやっぱりこのくらい無責任に…(笑)。
:これが、香港でこっちが台湾なんですけど…なんで、こう放射状に(笑)。やっぱり仏教の影響なんですかね?
(会場爆笑)
:この放射状は、今までやってないですもんね。
:ないですね。多分、明和電機のCIの蓄積がすごいので……アレ?中村さん、聞いてますか!?大丈夫ですかっ!!??
(中村さん、しばし気が飛んでいた様子…。会場大爆笑)
:中村さん?今どっか行ってましたよ!どこに行ってたんですか?(笑)
:(無言の笑顔で上を指差す中村さん)
:上に行ってましたか…、ビックリしたーーーー!危ない危ない(笑)。

※ここで補足説明。実はこの時、中村さんがトークショーを忘れて放心状態になっていたのは、本が完成したにもかかわらず、まだ印刷の良し悪しについて、考えていたからでした。ものすごい執念です。マラソンに例えるなら、ゴールしたのに、まだ走ってるようなもの?

:…話をもどして、みんな明和電機のデザインをやりたくなるんですかね?
:そうですね、自分も明和が最初に“電気屋さん”というコンセプトでソニーミュージックに乗り込んできた時に、うまくいくなって思った理由は、スタッフがやりたくなるんですよね。だから、アイデアが周りからも出るし、本人達からも出るし、すごく全体がノルというか推されるんでしょうね。それにしても、この放射状の出所は知りたいですねー。
:ほっとくと、アジアは全部コレになっちゃいますからねー。明和ブルーという重要なCIもないですからねー。サバオが明和電機になっちゃいますよ、コレ。切り抜きもめちゃめちゃだし(笑)。
:でも、ざっくりと楽しい感じというのはすごく見習いますね。

最終的には“ボーン!”ときて“バーン!”
 
:全く同じ質問ですね。
「40」
:来年40歳ですねー
:お互いねー。なんかこう、耳で聞くとすごいですけど、30代の後半というのは仕事が一巡するのかしないのか?だいたい自分の培ったテクニックとかでやろうと思えば楽できちゃったり、通用してしまう感じがあって、それがすごく怖いなぁと思いました。何かをやります!とかは全然言えないんですけど、やっぱり変わりたい欲がすごいありますねー。
:芸術家だからか?と思っていたんですけどね、僕も。
:社長もそうですよねー。何年か前から、ものすごいものがきてますよね。
:明和電機をまとめていく作業がすごく立て続けに一昨年くらいから始まって(ナンセンス=マシーンズ展から)、ベスト盤出したり、今回のこの本出したり…
:ナンセンス=マシーンズ展自体もひとつのパッケージとして出来あがちゃってますもんね。
:それが出来るのは、他にやりたいことがあったからですよ。エーデルワイスのような。
:デザイナーの仕事というのは受注でくる仕事もあるんですけど、考えてみたら押しかけて仕事をすることもあって、「こういうの作りたいから作らせてくれ」ということも今まで結構やってきているのでそれは変わらない。今回のこの一連の作業で自分の一瞬に抱えられる仕事のMAXの量が見えたんですね。でもその状態でも精神的にはやりたりない感がまだまだあった。それがわかったので、人前でこんなこと言うのもなんですが、40代っていうのは、そこの部分をやっていきたいですね。
:最終的には“ボーン!”ときて“バーン!”になっていくみたいな感じなんですかね?
:うーん、もう“とにかくいい!”“とにかくキレイだ!”とかそういう、一言でしか言えないようなデザインが出来たらいいなぁとは思いますね。言語で説明できると、文字でも変換できちゃうんで、そういうものじゃなくて…、説明すると幼稚になってしまうけど、見るとそれどころじゃないよっていうキレイさっていうのは、もしかしてアートがそうなのかもしれないですね。けど、デザインにもそれはあるような気がしていて、それはもしかしたら、ビジュアルだったり、考え方とか関係性とか…何でもいいんですけどね。
社:そういうものって、例えば「東京オリンピック」のポスターがいい!「大阪万博」のポスターがいい!とか時代のやる気みたいのもありましたよね。2006年の現在の日本はやる気があの時よりはない。
:多分そうなんでしょうねー。
:でも40代ってことは、あの時やる気で頑張ってた人達と同じ年代になってしまっているんですよね。今度は自分等がやらなきゃってね。
:そうですねー、あんまり人のためっていうのはぁ…自分の為にやりたいですけどねぇ…。
:まあ、僕もそうなんですけどね。
:今だから出来ることもまだまだあるだろうし。コレやります!って今、言えたらいいなって思いますね。
:やる気があることしかいえない。
:多分、芸術家っていう職業は一生そんなことの繰り返しですよね。
:最後の最後までやってる。
:70代でピークを迎えるすごい人もいるわけだし…それはすごい見てみたいなぁとは思います。芸術を鑑賞することって、普遍的な気持ちであると思うんですけど、そういうのが許される状況だったらいいですよねー、世の中が。

魚→花→石…。健康でいたい。
 

:僕こんなのも考えてきたんですけど…
「30年後」
:更に、その先!70歳。僕は今“花”をやってますけど、“花”の次“石”やるってのは、なんとなく見えてるんです。
:石…、はい。
:“魚”やって“花”やって“石”で終わるんだなぁ〜ってのは見えてる。“花”は40、50歳でやって何かがあって、終わって“石”にいく。“石”をやり始めた頃ですね。
:やり始めですか。まあ110歳くらいまで生きるとしたら、多分そのくらいですよね。
:グラフィックデザインもMacもすごいことになってるでしょーね。
:だといいですけどね。
:中村さんがMacを最初に使ったのはいつですか?
:ちょうど、明和の最初の頃です。
:じゃあ、13年前ですね。
:本にも書いてありますが、最初の頃にちょびっと使いました。
:13年後にMacがこんなことになるとは!って感じなので、これから30年後なんて大変なことになってるでしょうね。
:印刷物はあるとは思いますけどね。
:インターネットのこともあるし、広告の考え方が違っているでしょうね。
:社会の構造とかが変わると、トム・クルーズの映画でしたっけ(「マイノリティ・リポート」)?アレみたいに、なるんじゃないですかね?
:ダイレクトに脳に。
:今は検索で、キーワードの広告が並んだり、昔では考えなかったものがある。そういうことなんでしょうけど…。30年後ですか、健康でいたいですねー。
(会場から笑い)
:ホントに。
:ジム行きますか。
提示するってことです。
 


:最後の質問ですね。
「アートとは何か?」
:僕はもともとアートを知らない状態で、なにかわからないけど美術系の大学に入って、デザイナーとして就職をしてしまったんですが、気が付いたのがすごく遅くて、それこそ社長と接したり、他の人たちと接してだんだんこういうことなんじゃないか?っていうのは感じてきたんです。絵画とか最近僕はすごく認めていて、ある独特の気持ちの一枚の平面のもので、個人が個人として出せる。そういうものがアートだと思うんですけど、結構いろんなものが出尽くしていて、では、出尽くしたからもうないってものなのかな?という疑問を感じているんですよ。見つけたもの勝ち!みたいなのがアートだとしたら、ちょっとつまらない気がして…なんかこう商売の世界みたいになっちゃって…お笑いでも、インスタレーションでも、文章でもすごく今までにない世界観とか関係性…、藤幡正樹さんが言ってたんですけど、新しい関係性を見つけた時というのがアートなんじゃないかな?というのがすごく共感できたんです。すごいくだらないダジャレでも、今までに絶対にないところで成り立っているお笑いとか、そういうものがあったとしたら、それはもうアートになるんじゃないかと思うんですよね。
:イノベーションとは違うの?
:そうですね、最初にやってそれが気をてらったりとかそういうものではなく。無茶することは誰でも出来ますよね?そうじゃなくて、提示するってことです。
:デザインにおける発明ってそれに近いですよね?
:そうですね、見せ方や考え方とかね。逆に僕は絵画とか彫刻とかすごくいいなって最近やっとわかるようになりました。そうやって伝統的な手法を認めつつも、何でもいいから新しいものを見れた時に、アーティスティックなものを感じますね。美術館とかそういう感じのものではないんですけど。やっとアートに対して理解しはじめた頃です。だから今度、初めてMoMAとか行ってみようかなと思います。
社:今はもう残骸しかないですよ。どうしてあぁなっちゃったんだろう?って。
:み、観ない方がいいですかね?
:でも、文脈っていうのがありますからね。この時よりもイノベーション、この時よりもイノベーションというのがありますから、それを1回辿ってみるのもいいかもしれませんね。
:誰かが広げると、その後ってだいたいその広げた安全圏で気の効いた人が発表する。どの世界もそうだけど、その広げた人はギリギリだから意外と評価されにくいんですよね。死んじゃった後とかに評価されたりとかね。でも今はそうじゃないんでしょうけど。
:スピードは速いと思います。
:アートの人も気が付けるんでしょうね。
:鑑賞する側がメディアを持ってるからね。ちょっと前は写真集しかなかったし。明和みたいにやたらプレゼンするアーティストも居ますし(笑)。これでもか!っていうくらい。


原点回帰?!…要するに、“アホアホ”
 
:最後の質問ですね。
「これから」
:さっきの30年後とも近いですけど、明和電機というものが完成して、だから終わりって言われてもつまらない。明和とエーデルワイスの関係とか立場をもう一度聞けるといいなぁと。
:これまでの明和電機はあがりをやっちゃったと思うんです。本質的に明和電機ってなんなのよ!ってことをもう一度やらなきゃならないかなと思ってるんです。もしかしたら、もう1回最初に戻るとか…?(笑)いちばんピュアなところに戻る。で、いちばんシンプルなことをもう1回やる気がします。
:あの、オーディションの時のような?
:要するに、“アホアホ”ですよ。
(会場爆笑)
:あのハリセンでカールスモーキー石井さんを思いっきりぶん殴ったときのように(笑)。
:そんなところから再出発ですかね。
:そういえば、そういう感じって最近なかったですね。
:最近はすごくおしゃれに。みんな受け入れる側も待ってましたという感じですし。明和電機の本質は“キ〇ガイ”。
:そうですよね。初期は本物の鯉を魚打棒で殺してるんですよ、みんなの前で。知らないですよね?
:ソレを知ってる世代はもう殆どいないですね。
:アレ、やるとパチモクで楽しぃ〜雰囲気になってる会場が一気にドーン!って引いていきましたからね。どう解釈していいものかわからなくなりますよねー。でも、アレ僕大好きだったんですよね。
:でも、正道が居たから。
:そうですね、横に立ってもらうとやっぱりお兄ちゃんて有り難い、弟は安心してやれましたね。
:ソレをやりつつ、エーデルワイスの大きなテーマと謎の“男と女”をやりつつ…
:しばらくは両方やっていくんですね。
:そうですね。何度どうしようかと思いましたけど、永遠のテーマでやるしかない!と。
:明和に対する責任も負わないといけない。やっぱりそこは新しい明和も見たいなーと思いますね。
:あとは、勝手に明和をみんながやってくれるといいなというのもありますね(海外広告のように)。あと、僕が中村さんに期待することは“ボーン!でドーン!”ですね、やっぱり。次は何が来るのかな?っていうね。なぜかしら今、中村至男+土佐信道という本と中村至男+佐藤雅彦という本が偶然同時に出てしまって、しかも中村さんが初めて自分の言葉で文章を書いてて、中村キャラというのがいやがおうでも世の中に出ちゃったじゃないですか。で、おそらく今後そういうことが増えてくるんじゃないかと思うんです。中村さんって隠れたがりじゃないですか。自分の個展の時も「逃げたい」って言ってたじゃないですか(笑)。そうじゃ済まなくなるんじゃないかと思います。それを抱えつつ、中村至男デザインというものを“ボーン!でドーン!”とやっていくといいなぁと思いますね。
:最終的には出すもの次第で…頑張らなくちゃいけないなと思いますね。
:こんな低いテンションですが、お互い、持ってるものはすごい情念ですから。
:情念…(笑)。

以上、緩やかなテンションに乗せて、まるで囲碁の試合のような緊張感あふれる二人のトークショーでした。

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