驚愕!中国のコピー商品市場 <前編>

明和電機の魚コードUSBに限りなく似ているUSBケーブルが、フライングタイガーで売られていたという問題。じつはそれと同じような問題にまきこまれた人が明和電機の知り合いにいた。バイバイワールドの高橋くんが作った「パチパチクラッピー」がなぜか100円ショップで売られているという・・。今回はその高橋くんをお迎えし、中国のコピー商品市場に実際に取材にいったときの驚愕の体験と、そんな時代にもの作りのクリエーターはどう対応すればよいか対談しました。まずはその前編。

社 ども!高橋くん

高 ごぶさたですー。

社 今回ね、明和電機の代表的な製品である魚コードUSBにかぎりなくものすごくそっくりなストラップが、「デンマークのワンコインショップ、フライングタイガー」で売られてまして・・・

高 ネットで見て爆笑しました。逆に仕入れて売っちゃった。

社 でも、実は高橋くんも、先日、同じような境遇にあっていましたね。「日本のワンコインショップ」で!

高 わはは!そうなんですよ!

社 その辺をお聞きしたいんですが。

 

高 僕が2012年に、オモチャ会社のキューブさんと組んで発売した「パチパチクラッピー」(写真左)という、拍手をするおもちゃがあるんですけど、これがいま100ショップで売られています(写真右)。

社:それはパチモンですか?

高:いえ、僕も認めているので、パチモンではないです。名前は「パチパチクラッピー」ならぬ「パチパチトールくん」ですけど。

社 オリジナルはいくらだっけ?

高 日本円で1500円。

社 その1500円が、なんと、100円ショップでは・・

高 もちろん!100円ポッキリ!

社 ははは! 安すぎる! そもそも、なんで100円ショップで売られることになったの?

高 ある日、パチパチクラッピーを製造した(株)キューブの藤田さんからメールがきたんです。

「中国の商社から次のような連絡がありました。


“パチパチクラッピーによく似た製品を作りたいので、許可をください”
要するに、パクリ製品だと思います。” 
。」

社:なんだそれ!ダイレクトすぎる!

高:僕も食べてたポテトチップス、パソコンの画面に吹き出しましたもん。

社:そっか、パクリ製品を作った工場ではなく、中継ぎをする商社から連絡があったんだ・・。商社の時点でパクリとわかってたんだ。

高:はい。その商社は、中国ですでにパチパチクラッピーのパクリ製品を、ニセモノとは知らずに工場から仕入れて、日本の100円ショップに卸そうとしてたんですね。でも、たまたまその商社に60歳の日本人担当の人がにいて、その人が中国製品にはパクリが多いから、一応調べておこうと・・・としらべたら「あ、やっぱりあったよ」みたいな。

社 あぶねー!その人がいなかったら、そのまま100円ショップで売られてたわけだ。

高 商社としては、すでに工場に発注してしまってるから、捨てるわけにはいかない。そこで「こういうオモチャをつくってるのは、たぶん日本の めちゃめちゃ小さい会社ですから言ったら許可くれんじゃない?」みたいな感じのノリでいってきた。

社 すごいなー。つまり、ニセモノを作った工場は、すでに金型をおこして、受注をとるためのサンプルを作っていたということですね。

高 そう!工場が勝手に作ったサンプルを、商社がみつけて、100円ショップにプレゼンしたら通ったみたいな仕組み。

社 そして商社が量産中に気づいたと?

高 販売オッケー出た後に調べたらしいんですよ。

社 100円ショップ側との話の買い付けが決まったあとか・・・

高 もう何万個も生産しているさなかでしょうね。

社 こわー!

 

■驚愕の「パクリ・シティ」で工場見学

 

社 そして、高橋くんは、そういうパクリ工場がたくさんある中国の場所に自腹で調査にいったんですよね?えらいなあ・・・

高:いったいどんな場所なのか興味がありまして。 行ってみたら、とんでもない場所でした。深圳(シンセン)から新幹線で2、3時間いったところの汕頭(スワトウ)市っていうところがありまして、そこが国を挙げておもちゃの街といって売り出してる。

社:興味深い!

 

 

高 まずは、例の商社にいってみました。

社:わはは、玄関に「いらっしゃいませ!」って日本語が。

高:はじめから日本と取引する気が満々。ここは百均向け商品をたくさんやっているそうです。この商社はちゃんとした会社で、オリジナルの安価な玩具をたくさん取り扱ってます。

社 なるほど~。ここはちゃんとした会社なんですね。

高 ここはショールームなんですけど、百均のおもちゃ売り場を見ているかのよう。ブーブークッションとか、斧のオモチャとか。

社 あー、ハロウィンとかに出てくるやつだ

高 で、次におもちゃ工場がたくさんあるとこへ行ってみた

社 大田区みたいな感じ?

高 スケールがぜんぜんちがいます。おもちゃの工場は何万とあって、プラスチックの射出成型を激安で、あちこちでやってて。もう、おもちゃだったら作れないものはない。 それがね・・こういう感じなんです

社 え!!?なにこれ?これ廃墟じゃなくて??

高 これ工場なんですよ(笑) 中では絶賛稼働中。

社 ほ~~!まあ、作るためなら外壁は関係ないか…

 

高 こんなグレーな工場がめちゃくちゃあるんですよ(笑) で、中をのぞくと、こんな感じ


社 あ、意外と小規模なんだね。父親がやってた明和電機の、はじめのころを思い出す。

高 小規模なんです。小規模なんですけど、1日何千個とか作ってる。中国茶振舞われながらこういう生産内をみせてもらいました。

 

■驚愕のオモチャ展示場

高 こういう工場の中には、自分たちでオリジナルの製品を作る工場もあるんです。でも、作ってもなかなか売ることが難しいじゃないですか。そこで、スワトウ市ではおもちゃの展示場を運営するというビジネスが流行ってて。

社 おもちゃショーやギフトショーみたいな、見本市ということ?

高 そうです。ですが、期間限定じゃなくて、365日。

社 げええ!おもちゃショーが1年中やってるってこと?

高 そうです。しかも、その規模が、東京ビックサイトの比じゃないぐらい大きいんです。ビックサイト規模のサイズが3個。その他小さい規模の合わせたら10個以上ある

社 おもちゃだけで!?(笑)

高 おもちゃだけで(笑)

社 常設で!?(笑)

高 常設で(笑)

社 だめじゃん・・・勝てへんやん(笑)

高  いつでも見てくださいの状態。で、そこに世界中のバイヤーがくるんですよ。安くて、ちょっと掘り出し物みつけに。

社 世界じゅうからくるのか!

高 僕がいった時も、頭にターバンまいた中東のバイヤーが、メッチャおもちゃを抱えてましたよ(笑)

社 ぎゃはは。


高 展示場の入り口はこんな感じなんですけど

 

 

社 うわ!やる気満々だ!入り口に立ってるキャラクター、気持ちわるい・・

高 で、中身はこんな感じ。

 

 

社 え?え?これデパートじゃなくて常設のおもちゃの展示場なの?

高 この写真だと広さが伝わらないんですけど、めちゃくちゃ広いフロアにパクリのおもちゃだらけ。それが6階まで全部あるんですよ(笑)

社 あかん!あかん!

高 これね、カテゴリー分けされてなくて、いろんなおもちゃがばんばん目に飛び込んでくるんですよね。もうパチモンだらけ。早いですよ。ポケモンGOなんてすぐつくっちゃいますよ。もちろん、許可なんてとってない。

社 (笑) ひどいねこれ

高 ドラえもんとアイアンマンがミックスしてるオモチャがあったり。パクリミックスですよ。(笑)

社 同じ型を使ってるんだね、どっちも使えるように。

高 で、バイヤーは、気になったものをカートに入れていくんですよ。そこには全部タグが付いてて、会計をすると「このおもちゃを作った工場を紹介します~」ってなる。

社 なるほど、そこで発注契約のマッチングが成立するわけだ。

 

高 展示場の売り文句は、「スペースを1年間工場にかします。世界じゅうから死ぬほどバイヤー見に来ます」。

社 そっか、じゃあ、パチパチクラッピーのニセモノはすでに作られていて、この展示場に置かれてたってことなんだね。

高 そうなんです。それを中国の商社が見つけて、「これ、いいじゃん!」ってなった。

社 なるほどなあ、じゃあ、魚コードUSBのニセモノもすでにここあった可能性もあるのか・・。

高 中国で作ってるんですか?

社 パッケーにメイドインチャイナってかいてある

高 じゃあ、可能性はなくはないですね。

 

■日本のオモチャをパクるのが効率的

高 中国のこういう厳しい競争をしている工場は、少しでもオリジナル商品を作ってヒットを出したいと思ってる。でも、オリジナル商品を企画するほどの企画力もないし、コストもかかる。とすると・・

土 日本のおもしろいオモチャを見つけてきてパクるのが効率的!

高 ですね。「これが1500円!?うちだったら200円でいけるよ~」って、さくっと金型作って、サンプルを展示場においておく。そうすると、なんもしらないバイヤーが 「これすばらしいじゃん!しかも200円!買いだ!」ってなる。工場は何万個と生産し、バイヤーも激安で仕入れたので、お互いしめしめ、となる。

 

※商品の流れ図

 

社 今回のフライングタイガーのUSBケーブルは、明和電機の魚コードUSBとまったくおなじ形だから、フライングタイガー社内でデザインしたものじゃないのはあきらか。

高 もし社内デザインだったら、よけいタチが悪いですね。

社 だとすると、やっぱり、商社からのプレゼンで決めたか、または社内のバイヤーがこういう展示場でみつけたんだろうなあ。

高 中国の商社は、こういうガラクタの山からセンスのあるものを見つけて、大口の小売店に紹介するのが仕事ですからね。

社 で、高橋くんがラッキーだったのは、たまたまその商社に日本人の方がいて、商品がパクリかどうかを調べたから、事件にはならなかった。

高 ですです。僕にわざわざ許可取りに来る、というのは、ほんと特殊だったのかもしれないですね。

社 その商社の日本人の方ってどんな人?

高 60歳くらいのおじさんで、とても良い人でした。中国のぱくり天国を変えたいと思っていて、わざわざ定年退職後に中国に移住して。

社 リタイヤ後に中国へ!

高 中国がちゃんと権利を取って、オリジナルを国内で作れるようになったほうが良いんじゃないかって思ってる人だった。

社 志が高い! そして、100円ショップさんも経緯を理解し、高橋君とちゃんと契約を進めて合意し、正式に発売したわけだ。筋はちゃん通ってる!えらい!

高 でも・・・なぜそういう人が、フライングタイガーにはいなかったんでしょう?

社 そこが不思議なところ。世界30カ国で展開している大企業なんだから、社内に商品のライセンスのチェック部門がぜったいあるはず。

高 そうですね。中国はパクリ地雷だらけなんだから。

社 たとえば、グーグル検索で、「USBcable fishbone(USBケーブル 魚の骨)」と打ち込んだら、明和電機の魚コードが出てくる。なぜそんな簡単なことをその部署がやらなかったのかと。

高 なんでも簡単わかる時代に。

社 デンマーク本社がまずそれをやってなかったわけだし、日本の受け皿になってるゼブラジャパン株式会社も、それをやっていなかった。そもそも「日本のセンスを吸収して本社にフィードバックしたい」とフライングタイガーの社長も語っているのに。なぜ日本の商品市場を見ていなかったんだろう・・?

高 なんですかね?本社からの流れしか見てないんですかね?

社 うーん。とにかく中国で作られたニセ魚コードUSBが、みごとにそういう目をくぐり抜けて、日本まで泳いできたということか。魚だけに!

高 苦労したのか、骨だけになってましたけどね(笑)

社 いやでも、この中国の現状はショックだわ。「fabカフェでモノつくり」とか「クラウドファンディングで僕も商品化めざす」とか、そんななまっちょろいこと言ってる場合じゃないですね、これは。

高 ですねー。

(つづく)

 

後半は、このパクリ時代に、クリエーターはどう対処したらいいのか、さらに踏み込んで高橋くんと対談しました。乞うご期待。

 

【明和電機インフォメーション】

 

明和電機事業報告ショー2017 一般前売チケット販売中!追加ゲスト決定!

明和電機が2003年から毎年開催している、会社の事業報告会のスタイルで行うライブ・ショー、それが「明和電機・事業報告ショー」です。日本のサラリーマンが愛するプレゼンツール「パワーポイント」を使い、一年間の活動報告と、これからの活動予定を、社長の軽快な爆笑トークを交えて紹介します。

2016年度の明和電機は、上海にて広大なスペース(3000㎡)の美術館での個展を成功させ、オダギリジョーのライバル役であった「重版出来!」のドラマ出演、新商品「オタマトーンテクノ」の発売、模型の祭典「ワンダーフェスティバル」への参加など、多岐にわたる活動を展開しました。

また毎回ユニークなゲストをお招きしてのライブやクロストークもコーナーでは、二胡奏者のKiRiKoさんをお迎えし、明和電機の電動楽器と中国の伝統楽器との合奏、また海洋堂社長の宮脇修一さんをお迎えし、「ワンフェス」初出展の裏話や新商品開発の話などをお聞きします。

また、バイバイワールド株式会社の高橋征資さんをゲストにお迎えすることが緊急決定!魚コードUSB騒動について徹底解明します。

ユニークな明和電機の活動のすべてがわかるイベント、「事業報告ショー2017」に、みなさまどうぞご来場ください。

詳細

■日時 2017年4月14日(金) 開場 18:00 開演 19:00

■会場 スクエア荏原 ひらつかホール(〒142-0063品川区荏原4-5-28)

■チケット 前売り 2,500円 / 当日 3,000円

一般発売・・・3月18日(土)10:00~4月13日(木)21:00まで

前売りチケットは社長のイラスト付きオリジナルチケットをお送りします!サイン入り!

チケットのご購入はこちらから→ https://maywadenki.stores.jp/

※発送の関係上4月9日以降にお買い求めの方は、当日受付にてチケットをお渡しいたします。

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