魚器(なき)のことを考える

Yumina

アトピーがひどくなってきたので、病院へ行った。
この季節になると、毎年暴れる。

アトピーは、免疫システムが自分自身の体を攻撃することで
出てくる。
不思議なことだ。すべて自分だ、と思っていた自分の体が、
実は複数のシステムからできていて、ケンカをしあうのだから。

自分とは何か?

そのことを、生物学的に考える、よいモデルだ。

大学院の1年生のとき、僕はスランプになった。
芸術家になりたくて、美術大学へ進み、探求をつづけたくて、
大学院に行った。しかし、いったい何をつくればいいのか、
わからなくなったのである。

悩み始めたときに、小学校以来、発病していなかったアトピーが、
腕に現われた。
そこから免疫システムのことを考え始め、自己・非自己の問題を
考え始めた。

それは、「自分とは何か?」という、精神的な悩みと、直結した。
最終的に僕はそれを考える糸口を「魚」というモチーフに発見した。
そこから生まれたのが、「魚器(なき)」という作品群だった。

最近、その「魚器」のことを考え続けている。
アトピーが出たから、というわけではなく、
根源的な自分の創作の原点を、復習したいからである。

魚器は、未熟で、悩みぬいた20代前半の、
そのときなりの、人生の結論だった。

そこから、明和電機が生まれ、マスプロ芸術が発展していった。


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