中国が圧勝! なんでそんなに強いの? <ABUロボコン in  エジプト 四日目>

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本日はABUロボコン世界大会!

結果から言ってしまうと、中国の電子科学技術大学が圧倒的な強さで優勝。点数でいうと、他のチームが20点とか30点で争ってるところ、中国だけ120点とかですからね。サイヤ人とスーパーサイヤ人ぐらいのレベルの違いなわけです。

で、日本の金沢工業大学は残念ながら、準々決勝にも進出ならず。かっちりできた、いいロボットだったんですけどね・・・・。でも技術賞を獲得しました。

とにかくダントツで中国でした。

◆なんで中国のロボットは強いのか?の分析

中国はなんでこんなに強いの?

大学の体制とか、国の取り組み方とか、いろんな要素があると思いますが、ちょっと「マシン

」に絞って考えてみた。

今回のロボコンで、圧倒的なスピードで会場じゅうがどよめいたのが、三つめのピラミッドを組み上げた中国のロボット(下写真)。

他のチームが20秒ぐらいかかっているのに、このロボットは「2秒」!!はええ!!まるでそのスピードは、「居合抜き」のようでした。僕はこのロボットに「マッハ」というあだ名をつけました。

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なんで、この「マッハ君」が早いのか。

その説明の前に、まず、典型的なロボコンのロボットを見てみましょう。下図のように自動ロボットは、ブロックを運ぶために「距離センサー」や「エンコーダー」「ラインとレース」といったしくみを使って、一生懸命「自分がどこにいるか?どんだけ進んだか?」と計算します。
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ところがですね、「マッハ君」はそんな典型的なロボットの発想ではないんですね。まずタイヤがない。移動にセンサーを使わない。どうするかというと、まず「バーン!」ってレールを引く。そしてその上を、電磁弁でロックをかけておいたアームが、空気圧と高速モーターの力で、一気に発射されるんです。

もーね、これは見るば見るほど「ロボットというよりは、投石機に近い」んです。しくみが。

ただし、マッハ君以外の中国のロボットは、高度なセンサーと制御技術を使ってました。なので、ローテクという意味ではなく、あえて機械式の大胆な発想を持ち込んだ、ということです。

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考えてみれば、このしくみは合理的。だって、三つめの小さなピラミッドは、ロボットの移動距離が少ない。一生懸命センサーを使ってたどり着かなくても、目的地まで、正確にレールという「定規」を敷いてしまえば、いいわけです。

例えるなら、他のチームは「川を渡るのに、船を作って、海図やコンパスを見ながら進む」のに対し、中国は「橋を渡して、渡る」ということをやってるわけです。

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僕はこの「マッハ君」の発想にしびれましたね。かっこよすぎるアイデア。
これはもう「ナンセンス・マシーン」です。

「そんなのロボットじゃない!」と怒る人もいると思いますが、そう思う人にあえて問いたい。では「あなたの考えるロボットとは何?」。

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勝つためのロボットを作る方法は、いろんな可能性があると思うのです。出発点ではそれはとても自由で、いろんなアイデアを考えることができる。

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ところが、「ロボットはこうあるべき」という思い込みが、そのアイデアの幅をせばめ、中国のように「船ではなく、橋を作る」という発想にたどり着くことの障害になる

そしてこの点において、日本は一番狭い発想になる国だと思う。なぜなら「ロボット大国」だと思い込んでいるからです。AIBOやASIMO、アトムにガンダム。ステレオタイプのロボットのイメージが氾濫している。そのため

「本来、ロボットとは”機械”であり、その作動のバリエーションはいろいろある」

ということを忘れてしまう。
中国が強いのは、そんなステレオタイプのロボットを越えて、新しいロボットの発想の次元で開発をしたからだと思います。

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そして、忘れてはいけないのが、そのことに「頭」でたどり着いたのではなく、「手」を動かしてたどり着いたことです。優勝した電子科学技術大学のロボットチームの開発室にも行きましたが、「え?ここ?」と思うほどの、冷房もなし先端の工作機もなしのととっちらかった場所でした。でもとても印象的だったのは、部屋の横に積まれた、試作ロボットの残骸の山。技術というのは、頭だけで生まれるものではない!の記念塔でした。

今回、ABUロボコンに密着し、いろんなロボットを見ました。僕の最終的な印象は、「ABUロボコンは、ロボットコンテストではなく、ナンセンス・マシーンコンテストだ」ということでした。強いロボットほど、日本人が考えるロボット像より遠い。

正直言うと、NHKからロボコンのレポーターのお話をいただいたとき、「ああ、あのライントレースとかで、競技するロボットね」、ぐらいの、ちょっと退屈なイメージしかありませんでした。それはたぶん、日本人の多くがロボコンに対してなんとなく抱いている「ロボットに飽きてる」感情と同じだと思います。

でも、なぜ飽きてるかというと、多くのひとがステレオタイプのロボット像にとらわれてしまっているからだな、と現地でのレポートを終わって痛感しました。しびれるようなアイデアや、メカニズムのオンパレード。

「機械って本当に面白いな」

ということを再確認し、自分のモノ作りへの自戒も含め、とても勉強になる経験でした。

そろそろ日本も、新しいロボットのイメージを世界に発信してもいいんじゃない?

うーん、文章ではなかなか伝わりにくい!ダイナミックなロボットのバトルは是非映像で!

放送はNHK総合で、11月3日(水・祝)の午前9時から!
お楽しみに!

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