衝撃!中国のパチモン市場<後編>

フライングタイガーのコピー商品が売られていた問題。これまでの「前編」と「中編」では、主に中国の、パクリ商品を「作る方」の話をしてきました。パクリ問題にはもうひとつ、「売る方」の問題があります。高橋くんとの対談、いよいよ後半、この「売る方」の問題について語りました。

驚愕!中国にパチモン市場 前篇はこちら!

驚愕!中国にパチモン市場 中篇はこちら!

 

■売る方の問題点

社 今回のフライングタイガーでの魚コードUSBのコピー商品の件で、僕がびっくりしたのが、フライングタイガーという世界的なブランドで、堂々とコピー商品を売っていたこと。全世界に30か国で、700店舗という。今までだったらコピー商品は、もっとマイナーな市場で売ってた。

高 違法マーケットとか、闇市のようなグレーな場所でしたよね。

社 そう。10年ぐらいまえに、魚コードのストラップバージョンが中国でパクられたことがあったのね。売ってたのが見つかったのは、香港の女人街っていう、違法コピー商品をバンバン売ってるマーケット。僕もそれを現地で目撃したんだけど、明和電機のより性能があがっていて、なんと光るようになってた(笑)。

高 さすが!

Unicode

 

社 で、パッケージには「三和電気」って書いてあった。どこの会社?キャッチコピーも「ミスタリ ピカピカ魚骨」。

高 あはは!ミステリーじゃなくミスタリ!

社 生産元のキューブさんに、「これって、誰がパクったのか、調べられないんでしょうか」って聞いたら「わからないんです。調べていくと、最後にマフィアに行きついたりして・・お手上げです」って言ってました。

高 こわすぎます!

社 でも、今回はそんなグレーな世界ではなくて、表参道や渋谷にどーんとお店がある、世界でも有名なフライングタイガーでしょ? 一体何が起きてるの?と不思議に思いました。

 

■マスプロ芸術

社 明和電機では「一点もののふつうの芸術を、大量生産したい!」ということで、「マスプロ芸術」というのをやってきました。魚コードは、1995年にそれをはじめて実現したもの。最初に作ったのが、アートとして作った一点ものの魚型の100Vの延長コード。

 

社 それを1995年大量生産用にブラッシュアップして100Vの延長ケーブルとして発売しました。

 

F121-132-A

 

高 でっかいやつですね。

社 はい。そのあと2001年に形を縮小して携帯ストラップバージョンで発売しました。

 

社 そして、さらに2013年には同じ形でUSBバージョンが発売。

「魚コードUSB」の画像検索結果

 

高 今回コピーされたのは、その2013年に作られたやつだ。

社 フライングタイガーの一件は、構造だけを見れば、自分が作ったものが大量に生産され、しかも世界じゅうで売られているので・・

高 まさに「マスプロ芸術」が目指している世界。

社 そう。だから渋谷で売られてるのを見たときは、まるで川の源流に放流した鮭の稚魚が、川をくだって、太平洋までいって、りっぱになって源流にもどってきたみたいな感じしたよ。

高 あはは。鮭と同じですか!

社 なんか「おかえり!」って思いましたもん。

高 ははは!わかります!僕もパチモンをはじめて見たとき、ちょっとうれしかったです。「おまえ、世界に出てったんだなあ」って。

社 ですよね。でも問題は、出世して、世界からもどってきた製品に「明和電機」って書いてなかったこと・・・「フライングタイガー」って名前になってた(笑)

 

高 ちがう家の子になって、もどってきちゃった(笑)

社 そう、よその子になってもどってきた。しかも大量に増えて。「おまえ、僕の知らないところで、いつのまにたくさん子供作ったんや!」みたいな。

 

高 でも逆に言ったら、自分が作ったものが、何万個という数で広がるだけの世界的な魅力をもっているという一つの証明でもあるかな?

社 だね。それはうれしいけど、なにが今回問題かというと、世界的な企業が、個人から「センス」をコピーして、自分のところの「センス」として商品を売ってたとこですね。

高 そこはダメですね。

社 フライングタイガーのHPの会社の理念には、「いつでもユーモアいっぱいのデンマークデザイン」「コペンハーゲンにある本社のイノベーション&デザイン部門ではアイデアやコンセプトをもとに実験を行い、ユーモアいっぱいの商品を開発します。」「世界で活躍する有名アーティスト達とコラボレーションを行います。」と、しっかり買いてある。

高 いつのまにか魚コードがデンマークデザインになってた。

社 知らぬまに、明和電機もレゴと同じ、デンマークデザイン。もしかして、ウケるんかな?明和電機。デンマークで。

高 いけるかもですね。

社 ITの世界では、いかに優秀なソースを、効率よく組み合わせて、単時間で最大の効果を出すか、みたいなのが当たりまえだから、それが、モノ作りの方まできたってことなんですかねえ・・・。

高 情報よりのモノつくりなら、著作侵害には逆に敏感なのでは?

社 大手ほど、著作権には目を光らせてあるはずだからね。ほんと不思議なのは、グーグル検索で「魚 USB」と打ち込めば、魚コードUSBがずらーっと出てくる。なぜ、そんな簡単な手間をしなかったのかな?

 

高 安く大量に売るようなビジネスモデルだとだんだんと雑になるんでしょうね。

社 作りきり、売り切りで、次から次へと、何万個もさばいていかないといけない。そういう効率化かあ・・。

■どうやって売るか?

高 僕は今、「パチパチクラッピー」みたいに、オリジナルの製品をマスプロダクトで作りはじめているんですが、いかに売るか?ということをすごく考えます。

社 売ることは、作ることと同じぐらい重要だからね。

高 おもしろい製品のプロトタイプができても、それを次に売る、という段階で、「どこに売って」「どこにひろげて」の大変さというのをすごく感じる。だから大手玩具メーカーの価値って、そこがほとんどだと思うんです。

社 そうだね。フライングタイガーみたいに店舗を700店舗持っていれば、大量に製品を量産しても、さばけるからね。

高 そうやって販売網ができていれば、あとは、いかにおもしろいものを見つけだすか?という考えになる。そしてそこに中国のパクリ工場と巨大見本市場がぴたりとはまった。

社 どうしても、なにかを作りだす「MAKE(メイク)」の考えよりも、いかに安く面白いものを見つけるかという「CHOICE(チョイス)」の考え方になる。

高 最近、面白いメディアアートやガジェットのプロトタイプを作れるひとがたくさんでてきた。それをうまく量産の設計にして、ガッと世界で売って、広めて、なおかつ、作ったひとが第一人者として報酬が分かる仕組みがないなと思っていて。今回の中国のパクリ工場のような、量産できる工場がすでにあるのだから、流通に乗せられるしくみ持っていれば実現できるんじゃないかと。どうですかね?

社 それは理想的。僕もずっと「マスプロ芸術」で目指しているところだけど、やっぱり後半の「売る」仕組みができていないとだめで。資本があれば、前半の「量産」はできるんだよね。パチパチクラッピー、100円の売価だったらこれ1つ作るの30円でしょ?1万個つくっても30万だもんね。でもそれを売るとなると・・・

高 やっぱりたいへんですねえ、自分で1万個売るのは・・。

社 フライングタイガーや日本の100円ショップといった小売店は、やっぱりたいへんな努力をして、リスクを持って店舗を拡大してきたから、それができている。そこに個人や小さい規模ではかなうわけがない。店舗を持つリスクを避けるとしたら、そこはネットしかない。

高 ネット?

社 そ。産地直売をやる。または販売代理業や、配送代理業にたのむ。

高 そういうことですよね(笑)ネットで自分で売るか。はたまたそれレベルで何かやるか…、うーん、リスクしかないな…

社 リスクしかないですよ(笑)小売ってやっぱり、次から次へと売りさばかないといけないですから。個人は広告宣伝力もないし・・・。

高 たいへんだー。

社 あ、でも、個人がやれる方法として、明和電機の「おまつりモデル」っていうのあるのね。

高 お。なんですか?

社 明和電機って、神社の「おまつり」みたいな活動をやってるので、つぶれずに24年間もってきた。その仕組を見ると、まず、アートを作ります。これがお祭りでいう「御本尊」。そして明和電機はライブをしますが、これが「御みこし」みたいなイベント。そしてライブや展覧会ではポップアップショップを出すんですが、これがお祭りでいう「屋台」。

高 なるほど、「御本尊」と「御みこし」と「屋台」ね。

社 お客さんは、アートを見てありがたい気持ちになって、ライブを見て興奮して、ポップアップショップという屋台で商品を買って帰る。この3つをね、ポンポンとフットワーク軽くやってます。で、それぞれ独立してて、わずかだけど収益をあげてる。それがあわさって、24年間生きてる!

高 なるほど!

社 大企業ができないのは、こうした小回りがきくシステムや、スピード感。どうしても、僕らは大企業がやることをモデルにしがちだけど、そうではなく、小さいからこそできる方法があるはず。SNSなど便利なツールもあるしね。

 

■ネガティブからポジティブへ。

社 今回の一件で思ったのは。SNSってやっぱり情報がどんどん繋がってしまうんだなーと。誰か知らないひとが買ったものを僕が知って、世界にいって拡散してあっという間にこう繋がってしまう。

高 燃えやすいですからねー。

最近、ネガティブなつながりが多いじゃない。何か悪いことがあってそしてネガティブの方へいくと、オリンピックのエンブレム問題のときのようにたらみんなが叩き合ってしまう。そうではなくて、もっとこう、「ネガティブから~ポジティブへ~!」にできんかと!

高 なんすかそれ?(笑)

工員 マック赤坂ですね。

高 しらないな(笑)

社 とにかく、ポジティブに考えていくと。

高 なるほど、逆手にとって。

社 ネガティブに考えていくと、やがて弁護士が入ってきて、戦いあって、お互いが消耗戦になってしまう。それってクリエイティブでは全然ない。そうでなくて、お祭りにして、楽しんだほうがいい。いまのところフライングタイガーさんに「どう?お祭りでパーッといきません?」ってアプローチしてるんだけど、もう全然乗ってこないね(笑)

高 そうですね、めんどくさいなーって思ってるんでしょうね(笑)

社 いやなとこふんじゃったなーって(笑)。のどに刺さった魚の骨みたいに。

高 骨だからねえ・・・

 

【明和電機ニュース】

 

爆笑問題さんの番組、「探検バクモン」に出演します。
「世界を笑わす!発明工房」

■放送日時: 2017年04月26日(水) 午後8時15分~午後8時45分

■放送局: NHK

http://www4.nhk.or.jp/bakumon/x/2017-04-26/21/26147/1665198/

 

 「カブリマシーン8」

コンテンポラリーフード&リカー「PAVILION」にて、2017年5月14日(日)、明和電機のディナーショー「カブリマシーン8」を開催します。

明和電機が開発してきた数々のナンセンスマシーンの中から、新作を含む8つのマシーンが登場。明和電機の自動楽器の演奏に合わせて、摩訶不思議なパフォーマンスを繰り広げます。

ディナーショー概要

■日時: 2017年5月14日(日)

1回目 13:15-15:15(開場13:00 演奏13:45~)
2回目 17:00-19:00(開場16:45 演奏17:30~)
3回目 20:15-22:15(開場20:00 演奏20:45~)

■定員: 各回42名

■会場: PAVILION
(東京都目黒区上目黒1-6-10 中目黒高架下)

■料金: musicチャージ 6,000円
(フード、ドリンク別料金/1ドリンクオーダー制)

■申し込み: http://dinnershow170514.peatix.com/

特設サイトはこちら >http://www.pavilion-tokyo.com/event/201705_meiwa.php

驚愕!中国のパチモン市場<中編>

 

〈前篇〉高橋君がみてきた驚愕の中国パクリ市場の現実。そしてそこにつながる大型小売店。そうした現実の中で、個人のクリエーターは、どうやって自分のアイデアをパクられずに作ればいいのか。今回はこのふかーい問題について、高橋君と対談しました。

驚愕!中国にパチモン市場 前篇はこちら!

 

■パチモン商品の分析



中国でコピーされた「パチパチクラッピー」。どんなふうにコピーされたのか、興味あるわー。細部をみていくと、まず大きくちがうのは手の素材。

高 そう!

社 ホンモノはシリコン製。しかも中味がつまってる。・・・かなり重たいですね。

高 これでパチパチっと人間の拍手とおなじ柔らかい音がなるというのがポイントです。

社 一方、パチモンは・・

高 中身がすっからかん!空洞になってる。

社 薄っぺらいプラスチックでできてる!

高 しかも、爪とシワついてる(笑)

社 パクった人のこだわりがここで出てるんだろうな。白いだけでは手に見えないと思ったんでしょうね。

高 いちおうデフォルメしたつもりなんすけどね。

 

社 あと、金型の割り方がちがう。ホンモノはボディが左右にわかれるけど、パチモンは前後になってる。

高 そして分解すると、中の機構もごっそりちがいますね。

社 シンプルになってる?

高 すごくシンプルになってますね。簡単なしくみで、爪がひっかかって、抜けたらパチンと音がなる。

社 なるほどね

 

高 あちこちシンプルになってるんですが・・使ってみると、100円パチモンのほうが、軽くて操作が気持ちいい!

社 拍手の音も、パチモンの方が良くない?

高 そうなですよー。これでいいんじゃないかと。

社 パクッた方が性能がよい!安く作るために、部品点数をへらして、組立工程も簡単にして、いろんな工夫の結果が製品の質の良さにつながった・・ゼロ戦みたいだな。

高 僕も商社がパクりと言うので、どんなものかと疑ってましたが、これを見て納得しちゃいました。なので契約を結び、「廉価版」と呼んぶことにしたんです。むしろ、ここまで進めてくれてありがとうって感じで(笑)

社 最大のポイントは手だね。中身がつまったシリコンじゃなくて、空洞のぺらっぺらになってる。この選択は、高橋くんはできなかったでしょ?

高 できませんね。

社 わかりますわかります。だってここが高橋君の一番のこだわりだもん。クラッピーの開発の原点には、大学時代からの「拍手マシーン」の歴史がありますもんね

高 はい。「音手」という拍手マシーンで、いかに人間の手の素材を再現し、機械に人間のような音の拍手をさせるか、という研究をしていました。

社 そしてたどりついたのが、シリコン製の手。だからそこを捨てるなんて発想はでてくるのはむずかしい。

 

高 でも、このパチモンを見たときに、あ、こういう方法もあるのか、と

社 これって、すごく重要なポイントだと思うよ。マスプロにおいて。オモチャのような大量生産品を作るとき、「何を残して、なにを捨てるか」というのが大事。中国製は、シリコンという素材を捨てることで、100円という価格になり、かつ、操作感もよくなった。

高 勉強なるなー

社 僕、このパチモンを見て思うんですけど、この設計をしたひと、相当センスがあると思うんです。もしかしたら、高橋君みたいに、若い世代かもしれない。いままでみたいにただパクるというんじゃなくて、ちゃんと今の時代のセンスを持っていて作ってる。だとしたら、てごわいです。だって、昔の日本がそれだったから。めっちゃ軽いトランジスターラジオや電卓を作ったりしてたからね。

 

■オモチャがコピーできる時代

社 しかし、今回、、中国のパクリ市場、想像以上にすごいことになってて、びっくりしたね。

高 規模感がすごいです。

社 ちょっと前の音楽業界みたいなことになってる

高 ん、どういうことですか?

社 レコード業界の大発明は、音楽というコンテンツをプラスチックに刻んだことだった。音楽そのものは物質ではないけれど、エジソンがそれを物質に転換した、というところが大発明。

高 エジソン、えらい。

社 レコード会社という「プラスチック販売会社」は、音楽というコンテンツをプラスチックに刻むことで、バカみたいに安いプラスチックの価値を、何百倍にもふくらまし、さらにそれを何千枚と売った。

高 あはは、プラスチック販売会社。

社 アホみたいにもうかった。バブルのときなんか、CDというプラスチックの板が100万枚売れるなんて、あたりまえだったからね。

高 一枚3000円~4000円しましたからね。

社 明和電機が1995年、ソニーミュージック時代にレコーディングしたスタジオは、某有名ミュージシャンのスタジオだったんだけど、「ここは南国のリゾート地か」っていうくらい豪華だった。東京のスタジオだけど。

高 バブルだ!

社 でもCDの時代の悲劇は、プラスチックからコンテンツをはぎとれるようになったこと。みんなパソコンという「コピー機」と「通信機」が合体した機械を持つようになったので、バンバンCDをコピーして、ネットにばらまくようになっちゃった。

高 あ、そっか。

社 明和電機も、最初のころはCDが大きな収入源だったから、それが売れなくなったから大変で・・・ソニーミュージックも明和電機のマネージメントから撤退しちゃった。でもそのあと、明和電機はオモチャを作るようになった。オモチャも、プラスチックに「あそび」というコンテンツをきざんだものなんだけど、オモチャはCDとちがって、プラスチックからコンテンツをひきはがせない。

高 あ!なるほど!たしかにCDみたいにひきはがせない。

社 だからこれはCDとちがって安心だ、パクれない!とずーっと思ってた。「物質最高!いえい!」って。ところが今回の魚コードUSBも、パチパチクラッピーも・・

 

 

 

高 あ!やばい!、プラスチックからコンテンツを勝手にひきはがして量産してる!

社 そうなのよ!3Dプリンターとか、3Dスキャナーとかが安価かつ高性能になってきたので、オモチャというプラスチックから形のデータを簡単に引きはがせるようになった。さらに、今回の中国のパクリ市場みたいに、その規模で、モラルなくやられると・・

高 ぎゃー、だめだー。

社 あはは!だから、やばいんですよ、この業界も。

高 好きな形をはぎとれるんだ!

社 かたちだけはなくて、しくみもはぎとれる。

高 たいへんな時代だ・・・

社 おそらく近いうちに、スマホにも3Dスキャナーがあたりまえに搭載されるし。そしてクラウドにはみんながアップした3Dデータがどんどんふえる。すると保存されるデータの精度もあがってくる。一方で3DプリンターやCAMといった製造側は安くなる。どんどんコピーがしやすくなる。

高 あー。

社 だから最近、クラウドファンディングで発売する前に中国でつくられちゃう問題があるじゃないですか。

高 あります、あります。最近でいうと、四角いキューブでできたスイッチをかちかちやるやつ。

社 なんだっけ?しかくいやつ?どれ?

An unusually addicting, high-quality desk toy designed to help you focus. Fidget at work, in class, and at home in style.

高 これです。ただカチカチして 遊んで集中力高めるみたいな。キックスターターの時では7億円をあつめたんですけど。このあいだ中国行った時、まあ めちゃくちゃこれ売ってるんですよね(笑)そこらじゅうに。簡単に作れるんで。

社 ぎゃはは!パクリやすそー!

高 中国のパクリ工場としてはこれめっちゃいいネタだ。スイッチ入れてつけてプラスチックの形だけなんで。こういうの大好きなんですよ。

社 たしかに、機能が単純だからなあ。

高 もう1個、ハンドスピナーっていう。これまた集中力をたかめるアイテム。もともとアメリカで流行ったらしいんですが

北澤商事 Hand Spinner ハンドスピナー ボールベアリング トルクバー

社 へー。しらなかった。

高 やっぱりに中国行ったらこれが、めちゃくちゃあるんですよ。どこの売店にも。本物は139ドル以上するらしいんですよ

社 え…1万3900円??高い!

高 それが中国製だと8ドルぐらいで売ってました。

社 800円(笑)

高 もっとねぎったらもっと安く買えますよ(笑)

社 あかんあかん(笑)

高 金属の加工、プラスチックの加工、ちょっとやっただけで作れるもの。

この辺も怪しいのは、金型おこして簡単に作れるので。

社 なるほどね

 

■パクラレないためにはどうする?

高 こうみると、オタマトーンはすごいですね。まだパクられてない。

社 2008年に販売はじまりましたけど、まだコピー消費は出てないからね。シリーズのトータでル50万個ぐらい売れてます。オタマトーン。

高 え!すごい!中国のパクリ工場が、なんとかコピーしようとトライしたと思いますけど(笑)

社 わはは。形はコピーできるけど、しくみが難しすぎて、量産できないんだと思う。このしっぽ部分のスイッチがむずかしくて、不良品がたくさん出る。歩留まりが悪い。

高 あー、パクリ工場も、最初は「んー、どうやって作ってるのかなー?」で、「んーうまくいかないなーコストかかるー」となって、最期に「はいはい、やめた!やめた!」って

社 おこってオタマトーンを壁に投げつけたでしょうね(笑)

高 生産を行った(株)キューブさんが、中国で作るとき、最初は不良品だらけだった?

社 そう。それをキューブさんと工場ががんばって、すこしずつ不良率をさげていったから、現在はコピーされない。その工場しか作れない。

高 なるほど。そこまでいってるんですね。

社 パクられないためには、技術的にそういうものを持つかだなあ。

高 あー

社 なんか、パクりやすさを、数値であらわせないかな。単位は・・・「パクル」?

高 わはは、「ルクス」とか「モル」みたいな

社 魚コードは形だけだからパクリやすい「80パクル」。でもオタマトーンはしくみがむずかしいから「10パクル」みたいに。

高 ドラえもんとか形が丸くて単純だから、「90パクル」だ。

社 ベイマックスはもっと単純だから「99パクル」だな!

高 ぎゃはは

 

社 とにかく、パクルを下げないといけない。幸い音楽と違うのは、音楽はものすごい難しい曲を録音しても、簡単にコピーしてパクれるけど、オモチャは難しい作りはパクりにくくなる、ってことだね。

高 それは良い面だ

社 僕が危険だと思うのは、電子部品のユニットを組み合わせただけで出来る電子ガジェット。最近多いじゃない?あれはもう、一発でパクられる。「90パクル」。

高 パクリにくいといえば、朝日玩具さんで見たビリビリガジェット。

社 なんですか、それ?

高 ペンの形で、ノックしようとするとビリ!ビリ!ってくる。

社 簡単にパクれそうだけどね。

高 その商品の検品を人間がやってるんですが ビリビリするか肉体でチェックしないといけないので、みんなつらすぎてやめてっちゃったらしいです(笑)

社 わはは! そうかそうか。検品のつらさのハードルをあげとけばコピーされない商品もつくれる!

高 「だれも検品してくれいんだよー」って言ってました。

社 あとはオタク向け市場かなあ。中国でコピーしても、文脈がわかるところでしか売れない。その国に著作権の考えがしっかりあれば、保護できる。

高 なるほど。

高 そうでなければ、ディズニーみたいに、がちがちに権利を警備していくしかないね。でもそれは個人では無理。

高 うーん、たいへんですね・・。

<つづく>

 

魚コードUSBのコピー問題から高橋くんとの対談。今回は「モノを作る」という点でのパクリ問題でしたが、いよいよ<後半>は、「モノを売る」という点でのパクリ問題について、対談します。乞うご期待!

 

 

【明和電機インフォメーション】

 

明和電機事業報告ショー2017 一般前売チケット販売中!追加ゲスト決定!

明和電機が2003年から毎年開催している、会社の事業報告会のスタイルで行うライブ・ショー、それが「明和電機・事業報告ショー」です。日本のサラリーマンが愛するプレゼンツール「パワーポイント」を使い、一年間の活動報告と、これからの活動予定を、社長の軽快な爆笑トークを交えて紹介します。

2016年度の明和電機は、上海にて広大なスペース(3000㎡)の美術館での個展を成功させ、オダギリジョーのライバル役であった「重版出来!」のドラマ出演、新商品「オタマトーンテクノ」の発売、模型の祭典「ワンダーフェスティバル」への参加など、多岐にわたる活動を展開しました。

また毎回ユニークなゲストをお招きしてのライブやクロストークもコーナーでは、二胡奏者のKiRiKoさんをお迎えし、明和電機の電動楽器と中国の伝統楽器との合奏、また海洋堂社長の宮脇修一さんをお迎えし、「ワンフェス」初出展の裏話や新商品開発の話などをお聞きします。

また、バイバイワールド株式会社の高橋征資さんをゲストにお迎えすることが緊急決定!魚コードUSB騒動について徹底解明します。

ユニークな明和電機の活動のすべてがわかるイベント、「事業報告ショー2017」に、みなさまどうぞご来場ください。

詳細

■日時 2017年4月14日(金) 開場 18:00 開演 19:00

■会場 スクエア荏原 ひらつかホール(〒142-0063品川区荏原4-5-28)

■チケット 前売り 2,500円 / 当日 3,000円

一般発売・・・3月18日(土)10:00~4月13日(木)21:00まで

前売りチケットは社長のイラスト付きオリジナルチケットをお送りします!サイン入り!

チケットのご購入はこちらから→ https://maywadenki.stores.jp/

※発送の関係上4月9日以降にお買い求めの方は、当日受付にてチケットをお渡しいたします。

 

 

 

 

 

驚愕!中国のコピー商品市場 <前編>

明和電機の魚コードUSBに限りなく似ているUSBケーブルが、フライングタイガーで売られていたという問題。じつはそれと同じような問題にまきこまれた人が明和電機の知り合いにいた。バイバイワールドの高橋くんが作った「パチパチクラッピー」がなぜか100円ショップで売られているという・・。今回はその高橋くんをお迎えし、中国のコピー商品市場に実際に取材にいったときの驚愕の体験と、そんな時代にもの作りのクリエーターはどう対応すればよいか対談しました。まずはその前編。

社 ども!高橋くん

高 ごぶさたですー。

社 今回ね、明和電機の代表的な製品である魚コードUSBにかぎりなくものすごくそっくりなストラップが、「デンマークのワンコインショップ、フライングタイガー」で売られてまして・・・

高 ネットで見て爆笑しました。逆に仕入れて売っちゃった。

社 でも、実は高橋くんも、先日、同じような境遇にあっていましたね。「日本のワンコインショップ」で!

高 わはは!そうなんですよ!

社 その辺をお聞きしたいんですが。

 

高 僕が2012年に、オモチャ会社のキューブさんと組んで発売した「パチパチクラッピー」(写真左)という、拍手をするおもちゃがあるんですけど、これがいま100ショップで売られています(写真右)。

社:それはパチモンですか?

高:いえ、僕も認めているので、パチモンではないです。名前は「パチパチクラッピー」ならぬ「パチパチトールくん」ですけど。

社 オリジナルはいくらだっけ?

高 日本円で1500円。

社 その1500円が、なんと、ダイソーでいま・・

高 もちろん!100円ポッキリ!

社 ははは! 安すぎる! そもそも、なんで100円ショップで売られることになったの?

高 ある日、パチパチクラッピーを製造した(株)キューブの藤田さんからメールがきたんです。

「中国の商社から次のような連絡がありました。


“パチパチクラッピーによく似た製品を作りたいので、許可をください”
要するに、パクリ製品だと思います。” 
。」

社:なんだそれ!ダイレクトすぎる!

高:僕も食べてたポテトチップス、パソコンの画面に吹き出しましたもん。

社:そっか、パクリ製品を作った工場ではなく、中継ぎをする商社から連絡があったんだ・・。商社の時点でパクリとわかってたんだ。

高:はい。その商社は、中国ですでにパチパチクラッピーのパクリ製品を、ニセモノとは知らずに工場から仕入れて、日本の100円ショップに卸そうとしてたんですね。でも、たまたまその商社に60歳の日本人担当の人がにいて、その人が中国製品にはパクリが多いから、一応調べておこうと・・・としらべたら「あ、やっぱりあったよ」みたいな。

社 あぶねー!その人がいなかったら、そのままダイソーは売ってたわけだ。

高 商社としては、すでに工場に発注してしまってるから、捨てるわけにはいかない。そこで「こういうオモチャをつくってるのは、たぶん日本の めちゃめちゃ小さい会社ですから言ったら許可くれんじゃない?」みたいな感じのノリでいってきた。

社 すごいなー。つまり、ニセモノを作った工場は、すでに金型をおこして、受注をとるためのサンプルを作っていたということですね。

高 そう!工場が勝手に作ったサンプルを、商社がみつけて、100円ショップにプレゼンしたら通ったみたいな仕組み。

社 そして商社が量産中に気づいたと?

高 販売オッケー出た後に調べたらしいんですよ。

社 100円ショップ側との話の買い付けが決まったあとか・・・

高 もう何万個も生産しているさなかでしょうね。

社 こわー!

 

■驚愕の「パクリ・シティ」で工場見学

 

社 そして、高橋くんは、そういうパクリ工場がたくさんある中国の場所に自腹で調査にいったんですよね?えらいなあ・・・

高:いったいどんな場所なのか興味がありまして。 行ってみたら、とんでもない場所でした。深圳(シンセン)から新幹線で2、3時間いったところの汕頭(スワトウ)市っていうところがありまして、そこが国を挙げておもちゃの街といって売り出してる。

社:興味深い!

 

 

高 まずは、例の商社にいってみました。

社:わはは、玄関に「いらっしゃいませ!」って日本語が。

高:はじめから日本と取引する気が満々。ここは百均向け商品をたくさんやっているそうです。この商社はちゃんとした会社で、オリジナルの安価な玩具をたくさん取り扱ってます。

社 なるほど~。ここはちゃんとした会社なんですね。

高 ここはショールームなんですけど、百均のおもちゃ売り場を見ているかのよう。ブーブークッションとか、斧のオモチャとか。

社 あー、ハロウィンとかに出てくるやつだ

高 で、次におもちゃ工場がたくさんあるとこへ行ってみた

社 大田区みたいな感じ?

高 スケールがぜんぜんちがいます。おもちゃの工場は何万とあって、プラスチックの射出成型を激安で、あちこちでやってて。もう、おもちゃだったら作れないものはない。 それがね・・こういう感じなんです

社 え!!?なにこれ?これ廃墟じゃなくて??

高 これ工場なんですよ(笑) 中では絶賛稼働中。

社 ほ~~!まあ、作るためなら外壁は関係ないか…

 

高 こんなグレーな工場がめちゃくちゃあるんですよ(笑) で、中をのぞくと、こんな感じ


社 あ、意外と小規模なんだね。父親がやってた明和電機の、はじめのころを思い出す。

高 小規模なんです。小規模なんですけど、1日何千個とか作ってる。中国茶振舞われながらこういう生産内をみせてもらいました。

 

■驚愕のオモチャ展示場

高 こういう工場の中には、自分たちでオリジナルの製品を作る工場もあるんです。でも、作ってもなかなか売ることが難しいじゃないですか。そこで、スワトウ市ではおもちゃの展示場を運営するというビジネスが流行ってて。

社 おもちゃショーやギフトショーみたいな、見本市ということ?

高 そうです。ですが、期間限定じゃなくて、365日。

社 げええ!おもちゃショーが1年中やってるってこと?

高 そうです。しかも、その規模が、東京ビックサイトの比じゃないぐらい大きいんです。ビックサイト規模のサイズが3個。その他小さい規模の合わせたら10個以上ある

社 おもちゃだけで!?(笑)

高 おもちゃだけで(笑)

社 常設で!?(笑)

高 常設で(笑)

社 だめじゃん・・・勝てへんやん(笑)

高  いつでも見てくださいの状態。で、そこに世界中のバイヤーがくるんですよ。安くて、ちょっと掘り出し物みつけに。

社 世界じゅうからくるのか!

高 僕がいった時も、頭にターバンまいた中東のバイヤーが、メッチャおもちゃを抱えてましたよ(笑)

社 ぎゃはは。


高 展示場の入り口はこんな感じなんですけど

 

 

社 うわ!やる気満々だ!入り口に立ってるキャラクター、気持ちわるい・・

高 で、中身はこんな感じ。

 

 

社 え?え?これデパートじゃなくて常設のおもちゃの展示場なの?

高 この写真だと広さが伝わらないんですけど、めちゃくちゃ広いフロアにパクリのおもちゃだらけ。それが6階まで全部あるんですよ(笑)

社 あかん!あかん!

高 これね、カテゴリー分けされてなくて、いろんなおもちゃがばんばん目に飛び込んでくるんですよね。もうパチモンだらけ。早いですよ。ポケモンGOなんてすぐつくっちゃいますよ。もちろん、許可なんてとってない。

社 (笑) ひどいねこれ

高 ドラえもんとアイアンマンがミックスしてるオモチャがあったり。パクリミックスですよ。(笑)

社 同じ型を使ってるんだね、どっちも使えるように。

高 で、バイヤーは、気になったものをカートに入れていくんですよ。そこには全部タグが付いてて、会計をすると「このおもちゃを作った工場を紹介します~」ってなる。

社 なるほど、そこで発注契約のマッチングが成立するわけだ。

 

高 展示場の売り文句は、「スペースを1年間工場にかします。世界じゅうから死ぬほどバイヤー見に来ます」。

社 そっか、じゃあ、パチパチクラッピーのニセモノはすでに作られていて、この展示場に置かれてたってことなんだね。

高 そうなんです。それを中国の商社が見つけて、「これ、いいじゃん!」ってなった。

社 なるほどなあ、じゃあ、魚コードUSBのニセモノもすでにここあった可能性もあるのか・・。

高 中国で作ってるんですか?

社 パッケーにメイドインチャイナってかいてある

高 じゃあ、可能性はなくはないですね。

 

■日本のオモチャをパクるのが効率的

高 中国のこういう厳しい競争をしている工場は、少しでもオリジナル商品を作ってヒットを出したいと思ってる。でも、オリジナル商品を企画するほどの企画力もないし、コストもかかる。とすると・・

土 日本のおもしろいオモチャを見つけてきてパクるのが効率的!

高 ですね。「これが1500円!?うちだったら200円でいけるよ~」って、さくっと金型作って、サンプルを展示場においておく。そうすると、なんもしらないバイヤーが 「これすばらしいじゃん!しかも200円!買いだ!」ってなる。工場は何万個と生産し、バイヤーも激安で仕入れたので、お互いしめしめ、となる。

 

※商品の流れ図

 

社 今回のフライングタイガーのUSBケーブルは、明和電機の魚コードUSBとまったくおなじ形だから、フライングタイガー社内でデザインしたものじゃないのはあきらか。

高 もし社内デザインだったら、よけいタチが悪いですね。

社 だとすると、やっぱり、商社からのプレゼンで決めたか、または社内のバイヤーがこういう展示場でみつけたんだろうなあ。

高 中国の商社は、こういうガラクタの山からセンスのあるものを見つけて、大口の小売店に紹介するのが仕事ですからね。

社 で、高橋くんがラッキーだったのは、たまたまその商社に日本人の方がいて、商品がパクリかどうかを調べたから、事件にはならなかった。

高 ですです。僕にわざわざ許可取りに来る、というのは、ほんと特殊だったのかもしれないですね。

社 その商社の日本人の方ってどんな人?

高 60歳くらいのおじさんで、とても良い人でした。中国のぱくり天国を変えたいと思っていて、わざわざ定年退職後に中国に移住して。

社 リタイヤ後に中国へ!

高 中国がちゃんと権利を取って、オリジナルを国内で作れるようになったほうが良いんじゃないかって思ってる人だった。

社 志が高い! そして、100円ショップさんも経緯を理解し、高橋君とちゃんと契約を進めて合意し、正式に発売したわけだ。筋はちゃん通ってる!えらい!

高 でも・・・なぜそういう人が、フライングタイガーにはいなかったんでしょう?

社 そこが不思議なところ。世界30カ国で展開している大企業なんだから、社内に商品のライセンスのチェック部門がぜったいあるはず。

高 そうですね。中国はパクリ地雷だらけなんだから。

社 たとえば、グーグル検索で、「USBcable fishbone(USBケーブル 魚の骨)」と打ち込んだら、明和電機の魚コードが出てくる。なぜそんな簡単なことをその部署がやらなかったのかと。

高 なんでも簡単わかる時代に。

社 デンマーク本社がまずそれをやってなかったわけだし、日本の受け皿になってるゼブラジャパン株式会社も、それをやっていなかった。そもそも「日本のセンスを吸収して本社にフィードバックしたい」とフライングタイガーの社長も語っているのに。なぜ日本の商品市場を見ていなかったんだろう・・?

高 なんですかね?本社からの流れしか見てないんですかね?

社 うーん。とにかく中国で作られたニセ魚コードUSBが、みごとにそういう目をくぐり抜けて、日本まで泳いできたということか。魚だけに!

高 苦労したのか、骨だけになってましたけどね(笑)

社 いやでも、この中国の現状はショックだわ。「fabカフェでモノつくり」とか「クラウドファンディングで僕も商品化めざす」とか、そんななまっちょろいこと言ってる場合じゃないですね、これは。

高 ですねー。

(つづく)

 

後半は、このパクリ時代に、クリエーターはどう対処したらいいのか、さらに踏み込んで高橋くんと対談しました。乞うご期待。

 

【明和電機インフォメーション】

 

明和電機事業報告ショー2017 一般前売チケット販売中!追加ゲスト決定!

明和電機が2003年から毎年開催している、会社の事業報告会のスタイルで行うライブ・ショー、それが「明和電機・事業報告ショー」です。日本のサラリーマンが愛するプレゼンツール「パワーポイント」を使い、一年間の活動報告と、これからの活動予定を、社長の軽快な爆笑トークを交えて紹介します。

2016年度の明和電機は、上海にて広大なスペース(3000㎡)の美術館での個展を成功させ、オダギリジョーのライバル役であった「重版出来!」のドラマ出演、新商品「オタマトーンテクノ」の発売、模型の祭典「ワンダーフェスティバル」への参加など、多岐にわたる活動を展開しました。

また毎回ユニークなゲストをお招きしてのライブやクロストークもコーナーでは、二胡奏者のKiRiKoさんをお迎えし、明和電機の電動楽器と中国の伝統楽器との合奏、また海洋堂社長の宮脇修一さんをお迎えし、「ワンフェス」初出展の裏話や新商品開発の話などをお聞きします。

また、バイバイワールド株式会社の高橋征資さんをゲストにお迎えすることが緊急決定!魚コードUSB騒動について徹底解明します。

ユニークな明和電機の活動のすべてがわかるイベント、「事業報告ショー2017」に、みなさまどうぞご来場ください。

詳細

■日時 2017年4月14日(金) 開場 18:00 開演 19:00

■会場 スクエア荏原 ひらつかホール(〒142-0063品川区荏原4-5-28)

■チケット 前売り 2,500円 / 当日 3,000円

一般発売・・・3月18日(土)10:00~4月13日(木)21:00まで

前売りチケットは社長のイラスト付きオリジナルチケットをお送りします!サイン入り!

チケットのご購入はこちらから→ https://maywadenki.stores.jp/

※発送の関係上4月9日以降にお買い求めの方は、当日受付にてチケットをお渡しいたします。

1/xサイズから、1/1サイズへ

高校から大学時代中学校2年生でガンプラの「GM」を作ってから、プラモデルや玩具などで遊ぶことはぴたりと止まってしまいました。そしてこのころから「将来自分は芸術家になりたい」という小さい頃からの夢を、現実的に考えるようになっていました。

それまでは変身サイボーグ1号の「1/6」サイズや、ミクロマンの「1/18」サイズ、田宮のミリタリーの「1/35」サイズ、ガンプラの「1/144」サイスなど、いろんな「1/x」サイズで遊んできました。しかし芸術家になるためには、「1/1 サイズの自分の物語」を作り上げなければなりません。そのため、アニメや玩具の世界の「1/x サイズの他者の物語」に費やす時間が減ってしまったのです。

最初に自己表現としてのめり込んだのは、意外にも「絵画」ではなく、「音楽」でした。中学はブラスバンド、高校はバンドとコンピューターミュージックにどっぷりはまりました。海洋堂の宮脇社長は、「色気づいてくると、模型やってた子らも、バンドとか“ モテ” の方へいってしまう」と嘆いていましたが、僕はモテたいという欲求よりも、打楽器のメカニズムや、コンピューターミュージックのプログラムという「1/1 サイズの機械」に触れるエンジニアとしての楽しさにはまりました。そしてオリジナルソングを作るという「物語つくり」の面白さからも音楽活動にはまりました。

「芸術家になりたい」という夢は持ち続けていたので、その後、筑波大学の芸術コースへ進学しました。専攻したのが「総合造形」という、テクノロジーアートと現代美術が混合したコースで、そこで生まれて初めて「1/1 サイズの機械」を自分の手でつくりはじめました。それまでアニメや特撮、オモチャなど、鑑賞者としてしか体験してこなかった「マシン」を、こんどはオリジナルとして自分が作るという行為は、とてもエキサイティングな体験でした。

 

最初に作ったのは大学3年生のときの自動人形(1988年)でしたが、ここで金属加工のほかに、エポキシ樹脂とシリコン型を使いました。ホビージャパンなどでは中学校のときから見てきた技術でしたが、それを本当にやることになりました。当時はアマゾンなどの通販サイトはないので、樹脂を手に入れるには、つくばから高速バスに乗って東京まで行き、渋谷の東急ハンズで購入するしかありませんでした。学生にとっては高価な素材だったので、ちびちびと使い、古いシリコンは細切れにして再利用したりしました。

 

大学3年のとき、大学に1億円近くするCGのコンピューターが入り、それを使って空想の動物などのモデリングをしました。当時は3Dプリンターなどなかったので、それを実際に手で樹脂モデルに起こしたりしました(1989年)。ちなみにそれを見た後輩に「土佐さん、これワンフェスに出せますね」と言われたのが、初めて” ワンフェス“ という言葉を知ったできことでした。

 

 

そして卒業制作では、1/1 サイズの、音楽にあわせて踊る妊婦のロボットを作りました(1989年)。ここでも樹脂成型を多用しました。「1/1 サイズの自分の物語」を探しつづけた大学4年間でしたが、この妊婦のロボットを作ったとき、スランプになってしまいました。自分の作りたいものとは違う、「ハリボテ」に見えてしまったからです。

「造形」とは形を作ることですが、僕はその形に必然性を求めました。たとえば弓矢の弓の形は、弾性エネルギーをためこむために、あの形以外にはありえません。そうした機能性のある形を、自分の中にいるエンジニアとしての自分が求めていたのですが、それまで樹脂成型で自分が作ってきたものは、素材感も形も、自分にとって表層的だったのです。

結果的には一年間のスランプを経て、僕は「機能性のある造形」を作ることにたどりつきます。それが魚をモチーフにしたナンセンスな道具「魚器シリーズ」でした。それは、ABS樹脂とアルミという限定された素材で作られた「1/1 サイズ」の道具たちでした。

かつてミクロマンで遊んでいたとき、おもしろかったのは、機械と人間が「アタッチメント」で合体する、という点でした。それはロボットのように機械が人間のように擬人化することではなく、またサイボーグのように人間の身体が機械化することでもなく、あくまで人間と機械は対峙しており、「アタッチメント」で合体することで、ひとつの機能として働く、という点に惹かれたのです。

魚器シリーズはすべて「道具」ですが、この「アタッチメント」の方法とまったく同じです。土佐信道という人間がいて、そこに魚器という道具が「アタッチメント」され、ひとつのパフォーマンスを行う。その芸術表現にとてもしっくりきたのです。

大学院のとき、この方法のパフォーマンスをはじめたのですが、そのとき問題だったのは、「自分はどういうキャラクターとしてパフォーマンスを行うべきか?」という問題でした。たとえばミクロマンであれば、「宇宙から来た小さな巨人、ミクロマン」という明確なスタイルがあります。このおかげで、光線銃をアタッチメントしても、バイクをアタッチメントしてもおかしくありません。

しかし当時の僕はただの大学生であり、自分のキャラクターを見つけることができていませんでした。そこで最初はタキシードを着てパフォーマンスをしていたのですが、タキシードから読み取れる物語は、「マジシャン」であり、どうしてもうさんくさいパフォーマンスになってしまいました。

 

「 1/1 サイズのマシンが登場する、自分の物語はなにか?」ということを日々悩み続けたある日、ピーン!と閃いたのが父親が経営していた会社「明和電機」でした。父親の明和電機は1979年に倒産しており、それがあまりにつらい記憶だったので、自分の中で封印していました。しかし、自分がすでに大人になり、かつ、父親世代が作った物語を超えていかねばならない、と思ったとき、「あの明和電機に向き合おう」と思ったのです。

これがきっかけとなり、ミクロマンでもガンダムでもない、「明和電機」という自分の物語を手に入れました。(つづく)

 

<社長と模型 その1 プラモほしさに100円盗む>
<社長と模型 その2 プラモと出刃包丁>
<社長と模型 その3 マジンガーZを砂場で失くす>
<社長と模型 その4 ミクロマン 赤ん坊に襲われる>
社長と模型 その5 田宮のジオラマ 土のうに感動>
<社長と模型 その6 ガンダムのGM>

【おしらせ】

明和電機ナンセンスマシーン1/6モデル STORESにて受注中!!
>こちら

 

■明和電機ワンフェス報告会

ワンフェス2017に初参加した明和電機。イベントに向けて開発された「ナンセンスマシーン 1/6モデル」の開発秘話や、海洋堂とのコラボレーションアイテム「パラボラくん」の展開、そしてマルセル・デュシャンの「トランクの箱」から、GM(量産型ガンダム)までつながる社長のミニチュア模型にかける思いなどを明和電機のアトリエにて、たっぷり2時間お話します。

当日は、オリジナル製品と、その1/6モデルも展示します。
土曜日の夕方、お酒を飲みながら、みなさまどうぞお楽しみください。

◎とき 3月4日(土) 17:00~19:00
◎場所 明和電機 アトリ工
(東京都品川区荏原3-7-14 アルス武蔵小山1F)
◎定員 50名
◎チケット 1000円 (1ドリンク付き)
当日の11:00からアトリ工にて発売します。

※電協組合員の方は先行でSTORESにてご購入できます。

こちらから

◎お問い合わせ mail@maywadenki.com

 

■明和電機処分市

毎度好評をいただいています「明和電機処分市」を、同時開催します。製品開発のプロトタイプから、材料の端材、買ったはいいが使わない工具など、明和電機ならではのへんなものがたっぷり。

ぜひみなさま、お越しください。

◎とき 3月4日(土) 11:00~16:00
◎場所 明和電機 アトリ工
(東京都品川区荏原3-7-14 アルス武蔵小山1F)
入場無料

ガンプラのGM

1979年、父親の経営していた「明和電機」が倒産しました。その衝撃は土佐家の中に重く、暗く、たちこめました。
1979年は、テレビアニメ「機動戦士ガンダム」が放送された年でもあります。渡辺岳夫のエンディングテーマの「♪アムロ~ふりむかないで~」を聴くと今でも胸が苦しくなります。

父親の会社があったのは、兵庫県の赤穂市。そこに父親だけを残し、僕と兄ちゃんと母は、当時、広島県の呉で海上自衛官として働いていた姉をたよって引っ越すことになりました。なじみのプラモデル屋さんの「あけずみ」ともさよならでした。

呉を舞台にしたアニメ「この世界の片隅に」が大ヒットしていますが、まさに主人公が住んでいた場所が、当時の引越し先でした。この映画を見ると、あのときのことを思い出し、これまた胸が苦しくなります。

さて、呉に引っ越し、一年をすぎた中学一年生のころプラモデルの世界に空前のブームがやってきました。「ガンプラ」です。明和電機の倒産とともにはじまったテレビアニメ「機動戦士ガンダム」は、子供だけではなく大人を巻き込むブームとなりました。その流れで、プラモデルの販売元であるバンダイも、それまでの子供だましのプラモデルではなく、大人も納得できる1/144というスケールモデルとしてのプラモを発売しました。これが大当たりしました。

呉の田舎にはプラモデル屋も少なく、「商店街の店に、あさって入荷するらしい」などの情報が飛び交いました。しかし店にいってみると、「ガンタンク」のようなサブキャラしかなく、なんどもがっかりしました。最初に1/144 ガンダムを手に入れたときは、大興奮しました。

ガンプラは、メインであるガンダムよりも、適役である「ザク」などのデザインが好きでした。ズゴックやドムといったロボットには、それまでのロボットアニメにはないリアリティがあり、自分でもオリジナルのモビルスーツを空想して描いたりしていました。

 

中2のときに描いたオリジナルモビルスーツ(はずかし!)

 

こうしたガンプラブームをけん引したのが、「ホビージャパン」で、そこにはガンプラのさまざまな改造例やジオラマが掲載されており、自分もやってみたい!と思いました。そして選んだモビルスーツが、ガンダムの中で、もっとも地味といわれていた量産型ガンダム、「GM」でした。

そのGMの顔を切り抜き、オリジナルで透明パーツをとりつけ、全体を塗装し、汚し塗装や、マーキングを入れて「リアル」な改造をしました。その出来栄えがあまりに嬉しくて、まくらもとにGMを置いて、眺めながら寝たことを覚えています。

しかし、僕が人生においてプラモデルに熱狂したのは、この中1の時に作ったGMが最後でした。そこからぷっつりとプラモデルを作ることも、ミニチュアの玩具で遊ぶこともしなくなりました。そのころ、友人たちはテレビゲームに熱中しはじめましたが、ゲームにはまることもありませんでした。

この時期から、「自分は将来芸術家になりたい」とういう夢を、現実的に考えるようになりました。(つづく)

<社長と模型 その1 プラモほしさに100円盗む>
<社長と模型 その2 プラモと出刃包丁>
<社長と模型 その3 マジンガーZを砂場で失くす>
<社長と模型 その4 ミクロマン 赤ん坊に襲われる>
社長と模型 その5 田宮のジオラマ 土のうに感動>

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当日は、オリジナル製品と、その1/6モデルも展示します。
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(東京都品川区荏原3-7-14 アルス武蔵小山1F)
入場無料

 

田宮のジオラマ「土のう」に感動

 

小さいころ近所にあった模型屋「あけずみ」には店の中央にドーンとガラスケースがあり、そこには店主が作ったであろうプラモデルや商品が陳列されていました。玄関から入り、そのガラスケースを迂回した奥には、田宮のミリタリーシリーズや、青島の軍艦シリーズなどが積み重なっている「大人の空間」がありました。

小学校低学年の時の僕は、たいがいはその手前の「子供ゾーン」で100円もしないプラモデルを買っていたんですが、小学校高学年ぐらいになると、だんだんと背伸びをはじめ、なんだかマニアックな大人ゾーンのプラモに興味がわいてきました。

そんなとき、あけずみのおやじが、兄ちゃんと僕に「おまはんら、ジオラマってしっとんのか」と言いました。ジオラマ?と首をかしげていると、「これや。」と、一冊の写真集のようなものを渡しました。

それが田宮模型のカタログで、中にはタイガー戦車などの模型の紹介とともに、人形を使って戦場のシーンを再現した、数々のジオラマが掲載されていました。

「こ、こ、これはなんだ!」と見つめていると、おやじが「プラモは作るだけが楽しみやない。こうやってそのまわりの世界も自分の想像力で作ることで、ストーリーを楽しむことができるんや」と言いました。

これには目からうろこでした。まるで自分が神の視点にたって、プラモを使ってひとつの世界を作る・・・そうか!それが大人ゾーンの醍醐味やったんやああ!と気がつきました。

そうした新しい視点であけずみの大人ゾーンを見ると、ジオラマを作るためのさまざまな人形やアイテムがありました。その中で、ぼくのまなざしを釘づけにしたのは

「土のう」

でした。それまでは「なんで土を入れる袋の、プラモがあるねん」とバカにしていましたが、戦場の情景をいっきにリアルにするアイテムであることに気がつきました。たとえば「シルバニアファミリー」のウサギたちの情景の中に「土のう」を積み上げれば、そこはいきなり戦場になります。「土のう」すごい!

そこで自分でもジオラマがやってみたくなり、少ないおこづかいでも作れそうな「乗り物+人形」が入った田宮の「1/35 ドイツ ハノマーク装甲兵員輸送車D型」と、「土のう」を買いました。そして近所の公園で砂を集め、板の上に木工ボンドを塗って固定して、絵の具で色を塗り、模型をならべ、土のうをつみあげました。「ジオラマ完成や!」と喜びたいところですが、何かが足りません。

「・・・木が足りん」と思いました。

ジオラマ作りの本には、「木の表現には、枯れた草の根っこなどを使う」という説明があったのを思い出しました。植物の根っこは細くて繊細ですが、それをひっくり返して使えば、ミニチュアの木になるらしいのです。

その日から下校時は「根っこ根っこ」と使えそうな草を探しながら帰りました。そしてある日、枯れたつつじの若木を見つけ、引っこ抜くと、ジオラマに使えそうな根っこでした。それをジオラマに立てると、みごとに情景にはまり、「よっしゃああ!」と思いました。

さて、田宮といえば、プラモデルのほかに「楽しい工作シリーズ」という、モーターやギアなど、工作に使える動力機構をパッケージ化したものがありました。あるとき兄ちゃんがこのキットを使い、簡単な「ロボットの手」を作りました。モーターとギアボックスで正転・逆転をおこない、ものをはさむだけの単純なしくみでしたが、このロボットの手に毛糸で編んだ手袋をはめると、よりナチュラルな手に見えました。

「どや!ロボットやで」と見せられて興奮しました。いままではテレビの2Dの中でしか動くロボットは見たことがありません。それが、ほのぼのとした毛糸の手袋をはめていますが、ウィーンと現実に動いているのです。

「ロボットが家に来た」

と思いました。現在はそのロボットハンドよりはるかに高性能なロボット部品がネット通販で買え、Pepperのようなロボットが本当に家にくる時代になりましたが、モノがなかった昔は、「楽しい工作」でも十分に興奮できたのです。

ちなみにその後、兄ちゃんは、大人になってから田宮さんと仲良くなり、ウェブサイトで「楽しい工作シリーズ」を使った楽器の工作を発表するようになりました。

子供のときの夢が、こんな形でつながるのだから、人生って面白いですね。

 

<社長と模型 その1 プラモほしさに100円盗む> 

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ミクロマン、赤ん坊に襲われる

クリスマスといえば子供はサンタクロースがオモチャを運んでくれているという「幻想」を持っています。大人になるプロセスで、それがばれてしまうのですが、僕の場合、その幻想が崩れる瞬間を模型屋さん「あけずみ」で体験しました。

ある日、あけずみにいくと、天井からぶらさがっている玩具に、見慣れないものがありました。それが「サイボーグ1号」。1972年にタカラから発売され、当時の子供たちを熱狂させた男の子向けの1/6サイズの人形玩具でした。すでにテレビCMや雑誌広告でその存在を知っていましたが、それがあけずみにやってきたのです。「ぎゃああ!」と思わずさけんでしまいました。

ところがこのサイボーグ一号、価格も高価で、おいそれと庶民が買えるものではありませんでした。当時幼稚園の年長だった僕は、兄ちゃんと「ほしいなあ・・」と指をくわえるしかありませんでした。(追記:兄ちゃんは入学祝いに買ってもらってたそうです)

そんなある日、いつものように安いプラモデルを買いにいくと、店の奥で、あけずみのおじさんと、とある夫婦が会話をしています。プラモを物色しながら聞き耳をたてると、衝撃の会話が耳の中にとびこんできました。
「こんどのクリスマスにね、うちの子に、このサイボーグ1号を、サンタクロースを装ったお父さんがプレゼントしようと思うんですよ」

・・・え?なんだって!?
「サンタクロースってファンタジーじゃなくて、お父さんなの?」でもって「サイボーグ1号を買ってもらえる家庭があるの?」。この会話から二つのショックをうけ、子供の夢を現実がうちくだいてしまいました。

当時、サイボーグ一号が買えず、指をくわえている少年が日本にはたくさんいましたが、タカラさんもその指の数には気がついていたようで、そんな彼らの心を満たす玩具を発売しました。それが1974年に発売された、サイボーグ1号をきゅっと小型にしたような1/18サイズの人形「ミクロマン」でした。価格も一体700円と、がんばれば買える値段でした。そのミクロマンもある時あけずみに置いてあり、「ぎゃあああ!」と叫び声をあげました。

テレビに頼らないオリジナルストーリーを展開し、なぜか七三わけのアダルトなヘアスタイルのこのオモチャは、価格もサイズも、子供にぴったりでした。ミクロマンの面白さは、なんといっても「アタッチメント」。小さな人形に、武器や乗り物といった「アタッチメント」を取り付けることで機能が拡張します。ジョイント部がよくできていて、好きなように組み合わせて、オリジナルのマシンを作ることもできました。

しかし、このミクロマンには悲しい思い出があります。(このブログ、悲しい話しかないな・・・)

兄ちゃんとこづかいを出しあって、そのころミクロマンを集めていました。きわめつけが「ミクロマン・タワー基地」。ミクロマンのための秘密基地ですが、「基地キチ」としては大興奮です。これがあれば、ミクロマンの世界の「ジオラマ」が作れる! 手に入れるやいなや、本来なら掛け軸とか生け花とか飾るための「床の間」をジオラマのための空間として占拠し、集めたミクロマンの世界を展示しました。これはもう「すばらしき世界を作った!」という、神の視点の喜びがあり、熱狂しました。

そんなある日、知り合いが赤ちゃんを連れて家にあそびにきました。ちょうど僕も兄ちゃんも外出していました。赤ちゃんにとって床の間にあるミクロマンのジオラマは、「すばらしき世界」でもなんでもありません。ただのオモチャです。赤ちゃんだから手加減なく、ミクロマンに噛みつき、つかんでは投げつかんでは投げ、暴れまくりました。人間にとって赤ちゃんはミクロマンですが、ミクロマンにとっては怪獣でした。

夕方になり、ただいまーと居間に入って床の間を見た兄ちゃんと僕は、青ざめました。そこにひっくりかえったタワー基地、と大切なジョイント部からぼっきりおれたマシンと、よだれまみれでぐったりと横たわるミクロマンたちがいました。

「だ、誰や!誰にやられたんやああ!」

とオレンジ色のボディの「ジョン」を助けおこして聞きいてみましたが返事しません。するとおばあちゃんがすっと現れ言いました。「おまはんらがおらんときに 赤ちゃんが来て あそんだんや」。

兄ちゃんと号泣です。「なんてことをするんやああ!なんでとめんかったんやああ!」。

相手が赤ちゃんだから、怒るに怒れず。とにかく大事なジョイント部が折れているので「アタッチメント」で遊ぶことができません。この事件があった日から、ミクロマンのコレクションに対する熱意はすっかりさめてしまいました。
しかし、このミクロマンは、もろに明和電機の製品に影響をあたえています。現在、僕はさまざまなナンセンスマシーンを作っていますが、その多くは、社長というキャラクターに、ナンセンスマシーンを「アタッチメント」することで機能が拡張します。これは人間の機械化ですが、ロボットのように機械の擬人化でもなく、サイボーグのように人間を機械化することでもなく、あくまで人間と機械が「アタッチメント」で結びつき、協力しあうことで、なにかの仕事をこなすという姿です。この機械と人間のあり方に、僕はとても共感するんですが、その元にはミクロマンの影響が大きいと思います。

 

ちなみにこれは「スーパーミクロマン」のですが、ボタンを押すとウィングが開くというギミックがあり、今見ると明和電機のパチモクにそっくりです。

小さいころの影響ってホントに大きいのだと思います。

<社長と模型 その1 プラモほしさに親の財布から100円盗む> 

<社長と模型 その2 プラモと出刃包丁>
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当日は、オリジナル製品と、その1/6モデルも展示します。
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入場無料

マジンガーZを砂場で失くす <社長と模型 その3>

「秘密基地」。この4文字を見るだけで、昭和世代の男子は、なぜかドタバタと心が踊り、居ても立ってもいられなくなります。この症状を「秘密基地キチガイ」、略して「基地キチ」と呼んでいます(僕は)。

僕に「基地キチ」の洗脳をほどこした出発点は、なんといっても「サンダーバード」。このイギリスの科学特撮人形ドラマが日本で放映されたのが1967年。この年に僕は生まれたのですが、再放送もなんどもあったので、それを見ました。子供なのでドラマのストーリーはよくわかりませんでしたが、科学的な考証にもとづいて作られたメカと、そのメカが格納された秘密基地からの発進シーンには心躍りました。

このサンダーバードの秘密基地は、南の島の地下にあって、プールが割れて中からロケットがとびだすのですが、直射日光がまぶしいハワイみたいなリア充な世界から、いきなりオタクなメカの世界が躍り出るギャップは衝撃で、子供たちを「基地キチ」の世界へと歩ませました。

その後、この「秘密基地」の設定はアニメにも影響をあたえ、マジンガーZも光子力研究所の地下に格納されており、出撃するときはプールが割れて飛び出しました。こどもながらに「水道代、たいへんやな」と思いました。

男の子にはどうやら、機械に囲まれるとテンションがあがる、という症状があるようです。「基地キチ」もそのひとつですが、その他に、飛行機や車の操縦席でテンションがあがる「コクピット・キチ」や、電子楽器に囲まれてうっとりする「シンセ・キチ」、パソコンや周辺機器にかこまれる「デジ・キチ」、最近では3Dプリンターやレーザーカッターにかこまれる「ファブ・キチ」など、いろんなタイプがあるようです。これはいわば「子宮にもどって包まれたい」という胎児的要求と、好きなマシンに囲まれたいという文明的欲求が合体した、人類ならではのキチ(ただし男子限定)ではないか?と思います。

さて、マジンガーZといえば、1972年、画期的なオモチャがバンダイから発売されました。それが「超合金マジンガーZ」です。それまでのプラモデルやオモチャはプラスチックなので、軽かったんですが、この超合金は「重い」という付加価値がついていました。つまり重力という地球を味方につけた商品でした。

これはもう欲しくて欲しくてたまらなかったのですが、いかんせん高価。「一生のおねがい。勉強がんばるから。みんな持ってるんだよね。」という無責任三重奏で親をくどき、なんとか買ってもらいました。

ずしりと重いその超合金を手ににぎりしめると、「基地キチ」の洗脳をうけているのでじっとしてられません。「砂場や!」と公園に直行しました。砂場の砂をかためて「光子力研究所」をつくり、砂場に穴をほって地下格納庫をつくってマジンガーZを埋め、そこからズキューンと飛び出す遊びをやりました。

しかし、ここで僕は大きな失態を犯してしまいます。「基地キチ」としては、「光子力研究所」の作り込みに熱心になってしまいました。そしてあろうことか、研究所を完成させたことに満足し、マジンガーを埋めたまま家に帰ってしまったのです。

家について、なにか忘れてるな・・・・と思い返し、「マジンガアアア!」と気づいてダッシュで日が暮れて暗くなった公園の砂場へ走りました。しかしそこには墓荒らしにあったピラミッドのような光子力研究所と、むざんにも掘り出された穴があるだけでした。おそらくどこかのクソガキが、「地面からお宝が出てきた!」と大喜びで鼻を垂らしながら持って帰ったのでしょう。

とっぷりと日がくれた砂場で、「マジンガアアア!」と砂をにぎりしめながら号泣しました。いつまでも、いつまでも・・・・

さて、それからやく35年後。

1995年に明和電機の初の楽器の展覧会「ツクバ展」が開催されることになりました。このメインビジュルを作ることになり、どうしよう?となりました。「ツクバ」とは架空の研究都市の設定だから・・と思ったとき、「秘密基地や!」とひらめきました。兄ちゃんも、ビジュアルデザイナーの中村さんも、ドンピシャ「基地キチ」世代なので、「そや!秘密基地や!」となりました。

ここからは「失われたマジンガーZ」へのリベンジです。光子力研究所をモチーフにした「明和電機 ツクバ研究所」のイメージを描き、筑波大学の学生さんの力を借りて、そのジオラマを作りました。また、明和電機の魚器シリーズである「魚立琴(なたてこと)」が、ロケットに似てるからということで格納基地も作りました。これはもう、大人の力をつかって子供時代の夢を再現する作業だったので、楽しい楽しい!

このジオラマ作りには、現在、人形コマ撮りアニメなどで活躍中の「パンタグラフ」の井上くんや、絵本で売れっ子のヨシタケシンスケくんも、当時は学生として参加していて、見事にイメージを再現してくれました。

 

2004年、バンダイが超合金シリーズの30周年を記念して、ラフォーレ原宿で「超合金EXPO2004」を開催することになり、そこで明和電機に参加のオファーがありました。すぐさま「“失われたマジンガーZ”のリベンジや!」と思い、「超合金・社長」を作ることにしました。僕が描いたイメージスケッチを、ここでもまた、井上くんとヨシタケくんが見事に超合金にしてくれました。

ウィングの開閉から、ロケットパンチ、オプションの「サバオ」まで、夢にまでみた超合金のエレメントを注ぎ込まれていました。ふたりの造形もすばらしく、また紹介映像も格納庫におさまる社長ロボのシーンから始まる「基地キチ」のツボをつきまくったものでした。

この展覧会場にはオモチャのコレクターで有名な北原 照久氏も訪れ、「超合金・社長」を見て「コレクションしたいなあ~」とおっしゃったそうです。でも「これは、あげられへん」と、かつての公園の砂場で号泣した僕は思いました。

小さい頃の不満が、どこで創造力につながるかわかりませんね。

過去記事
<社長と模型 その1 プラモほしさに親の財布から100円盗む> 
<社長と模型 その2 プラモと出刃包丁>

 

 

さて、そんな明和電機社長の、模型やミニチュアに対する熱い思いや、先日初参加した「ワンダーフェスティバル2017」の報告、そして1/6モデルの制作秘話を語るいイベントが開催されます!

 

 

ワンフェス2017に初参加した明和電機。イベントに向けて開発された「ナンセンスマシーン 1/6モデル」の開発秘話や、海洋堂とのコラボレーションアイテム「パラボラくん」の展開、そしてマルセル・デュシャンの「トランクの箱」から、GM(量産型ガンダム)までつながる社長のミニチュア模型にかける思いなどを明和電機のアトリエにて、たっぷり2時間お話します。

当日は、オリジナル製品と、その1/6モデルも展示します。
土曜日の夕方、お酒を飲みながら、みなさまどうぞお楽しみください。

◎とき 3月4日(土) 17:00~19:00

◎場所 明和電機 アトリ工

(東京都品川区荏原3-7-14 アルス武蔵小山1F)

◎定員 50名

◎チケット 1000円 (1ドリンク付き)

当日の11:00からアトリ工にて発売します。

※電協組合員の方は先行でSTORESにてご購入できます。

こちらから

◎お問い合わせ mail@maywadenki.com

 

 

毎度好評をいただいています「明和電機処分市」を、同時開催します。製品開発のプロトタイプから、材料の端材、買ったはいいが使わない工具など、明和電機ならではのへんなものがたっぷり。

ぜひみなさま、お越しください。

◎とき 3月4日(土) 11:00~16:00

◎場所 明和電機 アトリ工

(東京都品川区荏原3-7-14 アルス武蔵小山1F)

入場無料

 

 

プラモと出刃包丁 <社長と模型 その2>

 

ワンダーフェスティバル2017、いよいよ来週末!

明和電機のアトリエも、追い込み作業で社長&工員さんの笑顔が消えはじめました。まにあうんかな・・・・・まにあわせな!

さて、そんな作業の合間にブログをちまちまと更新。社長のプラモやミニチュアに対する思いをお話する、第二話です。

第一話はこちら!

僕は昭和42年生まれ。一番最初の家の記憶は、幼稚園のときに住んでいた、赤穂市にあった工場&住居の家でした。

一階が工場で、父親の「明和電機」がそこで稼働していて、東芝の下請けで真空管のガラスなんかを切ってました。グラインダーがあったので、鉄の削れて焼けた匂いがしてました。作業してるおじさんやおばちゃんたちは、普通に工具や工作機なんかも使っていたので、「へええ、道具っておもしろいなあ・・」と小さいながらも思ってました。

工場には、油でよごれた部品を洗うためのシンナーの洗浄曹がありました。おおきな箱にたっぷりシンナーがはいっていて、独特のやばい香りがしてました。思春期だったら、ヤンキーのように吸っていたかもしれません。幼稚園児でよかった。

あるとき、そこに発泡スチロールを入れると「シュワシュワ~」をあっという間に溶けていくことを発見しました。

それがおもしろくて、梱包用の大きな発泡スチロールとかを見つけると、すぐさまシンナーの洗浄槽につっこみ、ガンガン溶かして遊んでました。なんだかウルトラマンで、倒された怪獣が溶けていくみたいで、おもしろかったのです。それを見つけた工場の工員さんに「なにしょんなら~っ!!」と怒られたなあ・・・。

幼稚園のときには、すでに、家の中に父親が買ったとおもわれるプラモデルがありました。覚えているのは、ゼンマイ歩行する「ガメラ」と、二式大型飛行艇のプラモ。

ガメラは歩行の安定が悪いので、父親が足に油粘土をつめて重心を下げてました。二式大型飛行艇は、もともと父親がその飛行艇を作った新明和工業(川西航空機)では働いていたので、買ったのだと思います。飛行艇の方は、作りかけがずっと箱の中にありました。子供ながらに、銃座や透明パーツの窓なんかをみながら、「こまけー!よくできてるー!」と関心してました。

さて、そんな幼稚園のとき、第一話でご紹介した近所のプラモ屋の「あけずみ」に、入り浸ってたわけですが、自分が買えるのは50円のガキ向けプラモだけでした。

あるとき、宇宙船のプラモを買ってきて、作ろうとしたら、プラモの周りにくっついている「ランナー」がやたら丈夫で、幼稚園児の力だと、なかなか本体からねじ切れません。

「これは、なんか他の方法をかんがえな、無理やな。」

と、幼稚園のちっさい脳味噌で考えた結論が、「道具をつかおう。」でした。一階が工場なので、ニッパーからドリルまで、なんでもあったんですが、さすがにおっちゃんたちの道具なので、勝手に使うのは気が引ける。

なんかないかな・・とあたりを見回すと、目の中に飛び込んできたのが、台所にあった「出刃包丁」でした。

「これや!これをつこうたら、一発で切れるわ!」

と、その出刃包丁を幼稚園児のちっこい手でつかみ、おもむろにプラモのランナーをがしがしと力まかせに切り始めました。客観的にその風景は、

「3秒後にはぜったいに指を切る、おさなご」

という、世のお母様方が貧血でぶったおれことまちがいなしの光景だったと思います。

案の上、3秒後には「スパン!」と左手の人差し指を出刃包丁で、ざっくりと切り、鮮血が吹き出したのでした。

ぎゃああああ!という絶叫に近い泣き声に、おばあちゃんが「どうしたんなら!」と飛んできました。そこには血まみれになった幼稚園児。

「なしたまあ!(赤穂弁で ”なんということだ” )」

とおばあちゃんもたまげましたが、さすが戦中派、すぐさま洗面所から洗面器をもってきて、したたりおちる血を洗面器で受け、ぐっと関節をおさえて止血し、赤チンと絆創膏で傷口をぐるぐる巻きにしました。(いま思えば、すぐに病院に行き、縫うはずですが、そこが戦中派)

「なんで出刃包丁やねん!あぶないやろが!」

と心配半分で怒られましたが、

「だって作りたかったんやもん・・」

アホな答えしかできまんでした。とぐじゅぐじゅに泣きながら。

 

あれから45年。いまではあらゆる工具や工作機械を指を切らずに操作できるようになりました。でも心のどこかにあのときに痛みや恐怖心が残っています。結構それが大事で、この恐怖心があるから、怪我をしないのだと思います。

左指の傷を見ながら、ときどき今でもそう思います。

 

 

 

プラモほしさに親の財布から100円盗む <社長と模型 その1>

2月19日、明和電機がワンダーフェスティバルに出展します。

これを記念しまして、社長の”模型への思い”を、つづっていこうと思います。今回はその第一弾、幼少のときのプラモデルの思い出をご紹介します。

僕は小学校の6年生まで、兵庫県の赤穂市に住んでいました。城下町の小さな街でしたが、一軒、プラモデル屋さんがありました。名前が「あけずみ」。店の正面にはショーケースがあり、店長のおじさんが作ったと思われるプラモがならぶという、典型的な海洋堂インスパイヤ系の模型ショップでした。

幼稚園のときから、おこずかいをもらうと、そのプラモ屋に行き、当時は50円の小さなプラモデルをわくわくしながら買っていました。

お店には気難しい店長のおじさんの他にネコがいて、プラモの匂いと、ネコの匂いがまじった、独特の魅力的な香りが漂っていました。

おじさんはとにかく気難しい人で、長居している客がいると「買わないなら帰れ」と平気でいう人でした。しかし、プラモにかける情熱は熱く、あるとき兄ちゃんとタミヤのジオラマ談義になったときなど、小学生の僕らにタミヤの分厚いカタログをタダでくれることもありました。

さて。

小学校3年生のときのこと。一週間のおこずかいが210円と決まっていた当時、駄菓子屋でおかし屋を買って残った100円硬貨をにぎって「あけずみ」にいきました。店内を物色していると、何やらいままで見慣れないサイズのプラモの箱がありました。「なんだこりゃああ!すげえええ!」と、一発で心をわしずかみにされました。

それがこれです。

 

 

吉野正裕さんのページから引用

 

 

・・・ダサい!今見ると悶絶ダサい!

しかし、当時の僕にはこれがイカすロボットに見えたのでした。まず、プラモメーカー「青島」がオリジナルで生み出した、TVでは放映されていないキャラクターという珍しさ、かつ、合体ロボットなのに、一体が100円、つまり「頭」「胴体」「手」「足」の、4体の完全合体を全部そろえても、400円という安さに、衝撃を受けたのでした。

当時、コンバトラーVの超合金の合体ロボが、全部そろえると7000円以上していたので、これはもう、「値段のケタが、ひとつ少ないやんけ!」というほどの激安感だったのです。

100円しかもっていなかったので、おもわず、「頭のパーツ」を買って帰りました。そして、兄ちゃんに「すごかろう!これすごかろう!」と見せると、兄ちゃんも「すごい!すごい!」と興奮したのでした。

しかし。

頭のパーツだけあっても、やはり物足りません。ディアゴスティーニ・システムと同じく、どうしても全体をそろえたい欲望がガキの胸中にうずまきます。まんまと青島の商売にハマったわけですが、残念ながら、お小遣いは0円。

「・・・・・・これは・・もう・・・親の財布から100円しっけいするしかない。」

ここで小学3年生の僕は、生まれてはじめて「ねこばば」という悪の道に手を染めることを決意しました。でも、親の財布からそのまま盗んだら、すぐにバレてしまう。何かいい方法はないか・・と、小学3年生のしみったれた脳で考え出したのが、

「偶然100円を見つけた作戦」

でした。その手法は以下になります。

・・・・・

①台所の引き出しにある、親のがま口の財布から、100円をこっそり抜き出す。

②100円を本棚と床のすきまに隠す。

③兄ちゃんを呼ぶ。

④なんか自分でギャグを言って、笑い転げるて床に倒れる

⑤「あああ!床のすきまに100円があるよ!兄ちゃん!」と発見する。

⑥100円にぎって「あけずみ」へゴー

・・・・・

兄ちゃんを発見時の目撃者として巻き込むという、かなり呼息な作戦でしたが、見つけたときは兄ちゃんも「ほんまやああ!」とまじで驚いていたのでした。

さっそく「あけずみ」に走り、「胴体のパーツ」を買ってきて組み立てる。このキット、接着剤を使わない、現在のガンプラみたいなシステムだったので、組立もあっという間にできる。すると、今度は「手のパーツ」が欲しくなる。

そこで上記の①から⑥を、次は「テレビの下に100円を隠す」ことで行いました。2回だから兄ちゃんも「・・お、おお、また見つかったんか。」と首をかしげてました。

最終的には「足のパーツ」も欲しくなり、次は「机の下に100円を隠す」ことを行いました。つまり「偶然100円を見つけた作戦」を、3回繰り返しました。「あけずみ」のおじさんも、一日になんども買いにくる僕に「またきたんか」という顔をしていました。兄ちゃんも最後は「・・おまえ、ネコババしたやろう」という細い目で、僕をプラモ屋へと送り出したのでした。

親の財布から300円を盗んだことは、まず、おばあちゃんにバレました。夕飯の買い物をしにでかけたとき、財布のお金が減ってることに気がついたのです。そして家にもどると、部屋の中では、合体ロボットで楽しそうに遊ぶ僕。

「おまえか」

とおばあちゃんのまなざしがロックオンしました。すぐさま「のんちゅん(ぼくの幼少の呼び名)、ちょっとおいで」と、家の奥の、裏庭の入り口に呼び出されました。「おまはん、財布からお金とったやろ」と言われ、全身がピキーーン!と硬直しました。「偶然100円」が「必然100円」に変わった瞬間です。

「なんで盗ったんなら。ゆうてみ」

と言われ、

「・・・ほしかったんやもん」

とアホな回答しかできませんでした。結局そこから母親にも伝わり、あとでこっぴどく怒られました。

とにかく今見れば、ダサいとしか言いようがないプラモデルですが、オモチャには魔法があるようで、本当にそのときは欲しくて欲しくてしかたがなったのです。不思議ですね。